2016.10.11 政策研究
【フォーカス!】東京五輪
国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。
東京五輪に3兆円?
東京都の都政改革本部オリンピック・パラリンピック調査チームが9月29日、2020年東京五輪・パラリンピックの開催費用などは総額3兆円を超えるとする試算結果を発表した。
都の負担を減らすため、整備するボートとカヌー・スプリント会場の「海の森水上競技場」、バレーボール会場の「有明アリーナ」と、水泳会場の「五輪水泳センター」の3競技施設については、建設中止を含めた抜本的な見直し案を小池百合子知事に提案している。
東京五輪という絶対成功させなければならない“国策”に対し、「都民ファースト」を掲げる小池知事が挑むという構図だ。豊洲市場の問題と合わせ、ニュースやワイドショーの注目を一身に集め、知事就任から2カ月を過ぎてもその人気は高まるばかりだ。
ただ、今回五輪見直しで懸念されるのは、どこまでの勝算があって、この課題に取り組んでいるのかだ。端的に言えば「落としどころが見えているのか」という疑問だ。
無駄遣いを排除するということは、都民の支持を集めやすいのは分かる。だが、海の森水上競技場の代替施設として挙げた宮城県登米市の「長沼ボート場」を小池知事は10月15日に視察する予定にしているが、国際ボート連盟の会長は現在の案を支持している。簡単に決着しそうにない。
同様に五輪水泳センターは「東京辰巳国際水泳場」が代替案だが、日本水泳連盟は現計画の堅持を求め「レガシー(遺産)として十分使えるよう、プールを造ってほしい」とする。有明アリーナは横浜市の「パシフィコ横浜」を代替の候補としている。
施設は競技団体と調整して決まって経緯がある。競技団体側からは「いまさら」というように映るわけだ。
豊洲市場から五輪施設と戦線を広げたことは、都民の人気を高める意味では貢献しているだろうが、小池氏は東京都知事である。追及していればいいというわけではない。最終的には問題を解決しなければならない。
豊洲市場の安全性が最終的に確認され築地から移転するとなったとき、果たして市場関係者を説得できるのだろうか。「地下水で汚染されている」という風説を広めたことによる食の安全への疑問、風評被害を払拭するのは容易ではない。反対に豊洲移転が駄目となったら、これまでの支出やガバナンスに対する責任が、行政の継続性の面から知事に発生する。小池知事はこの問題で都議会から攻撃を受けることになる。
五輪でも3カ所の見直しを打ち出しておきながら、結局、元の鞘に納まったのでは、知事のリーダーシップに疑問符が付くことになる。と言って、競技団体側も簡単には受け入れられないだろう。
もはや水面下の調整で解決することはできない。事実に基づくオープンの議論を通じて、どう導き関係者の合意を得るのか。小池知事がその中心にいる。