2024.04.10 まちづくり・地域づくり
第6回(最終回) シビックプライド(Civic Pride)の可能性
関東学院大学法学部地域創生学科教授 牧瀬 稔
本連載の振り返り
本連載は、2023年10月29日に関東学院大学において開催された「住民自治を実現するシビックプライドの可能性」というシンポジウムが土台となっています。
同シンポジウムでは、本村賢太郎・相模原市長(連載第2回)、大谷明・ひたちなか市長(連載第3回)に基調講演をお願いしました。その後、両市長に加え、シビックプライドを醸成している実務家や研究者を交えて、パネルディスカッションを行いました(連載第4回・第5回)。
第1回は、シビックプライドの意味を説明しました。近年、自治体においてシビックプライドが注目を集めている事例や、日本におけるシビックプライドの経緯を確認しました。
第2回は、相模原市の事例を取り上げました(本村市長の講演をまとめました)。同市は「さがみはらみんなのシビックプライド条例」を制定しています(2021年3月25日制定)。条例名に「シビックプライド」という言葉を使った全国初の条例です。相模原市は同条例を根拠としてシビックプライド政策を着実に進めています。
第3回は、ひたちなか市(茨城県)のシビックプライド事業の事例を紹介しました(大谷市長の講演をまとめました)。同市は各施策にシビックプライドの要素を入れ、市民が地域に抱く誇りや愛着を基本として政策を展開しています。
そして第4回と第5回は、パネルディスカッション「住民自治を実現するシビックプライドの可能性」の要点をまとめました。
今回(第6回)が最終回となります。シビックプライドに関して、本連載において今まで情報提供できていないことに言及します。そして最後に、シビックプライドの可能性を指摘して、本連載を締めくくります。
「シビックプライド」に関する条例
シビックプライドに関する条例の代表格は、相模原市条例です。同条例の概要は、既に紹介しました(第2回)。同市はシビックプライド条例を法的根拠として、シビックプライドを醸成するために多様な施策や事業を実施しています。
2023年4月からは「さがみはらみんなのシビックプライド向上計画」という行政計画がスタートしています。同計画を基本に置き、計画的かつ中長期的な観点からシビックプライドの醸成に取り組んでいます。
ちなみに、相模原市条例8条の見出しは「計画」となっています。条文は「市長は、相模原市と関わりのあるみんなのシビックプライドを高める取組を効果的かつ計画的に推進するための計画を定めます」とあります。同条文を根拠として「さがみはらみんなのシビックプライド向上計画」が策定されました。
条例名に「シビックプライド」という言葉は使用していませんが、住民等が都市・地域に対する誇りや愛着を目指す条例は、いくつかあります(表1)。
表1 シビックプライドに関連する条例
豊田市(愛知県)の「『WE LOVE とよた』条例」(2017年3月22日制定)も、シビックプライド醸成を意図した条例といえそうです。
また、川口市(埼玉県)の「大きな声で川口が大好きだと叫んでみませんか川口プライド条例」(2022年12月23日制定)、名張市(愛知県)の「みんなが名張を好きになるなる条例」(2024年3月26日制定)があります。川口市条例と名張市条例は、議員提案により成立した条例です。
さらに、条文に「シビックプライド」という言葉が登場する条例は、和光市(埼玉県)の「和光市まちづくり寄附条例」(2012年3月22日制定)、王寺町(奈良県)の「王寺町まちづくり基本条例」(2020年12月16日制定)、盛岡市(岩手県)の「盛岡市郷土伝統芸能の継承発展及び担い手育成に関する条例」(2022年9月29日制定)において確認できます。
一気に……というわけではありませんが、シビックプライドに関する条例は増えつつあります。