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2016.05.25 議会運営

第47回 農業協同組合の理事への就任と兼職禁止規定への抵触

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明治大学政治経済学部講師 廣瀬和彦

農業協同組合の理事への就任と兼職禁止規定への抵触

Q地方公共団体の議員が在職中に農業協同組合の理事に就任するよう要請を受け理事に就任することを受諾したが、地方公共団体の議員における兼職禁止規定に抵触しないか。

A地方公共団体の議員に対し一定の職への兼職を法律によって禁止しているのは、議員としての職務を完全に果たすための妨げになるような職を兼ねることを禁止することにより、職務の公正な執行を担保し、政治的中立性を確保するためである。
 地方自治法をはじめとする各種の法律により地方公共団体の議会の議員の兼職が禁止されている職は以下のとおりである。
① 衆議院議員・参議院議員(地方自治法92条1項・国会法39条)
② 他の地方公共団体の議会の議員(地方自治法92条2項・ただし一部事務組合議会議員及び広域連合議会議員は除く(地方自治法287条2項・291条の4第4項))
③ 地方公共団体の常勤の職員(地方自治法92条2項)
④ 地方公務員法28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員(地方自治法92条2項)
⑤ 普通地方公共団体の長(地方自治法141条2項)
⑥ 副知事・副市町村長(地方自治法166条2項)
⑦ 選挙管理委員(地方自治法182条7項)
⑧ 裁判官(裁判所法52条1項1号)
⑨ 人事委員会委員・公平委員会委員(地方公務員法9条の2第9項)
⑩ 教育長・教育委員会委員(地方教育行政の組織及び運営に関する法律6条)
⑪ 都道府県公安委員会委員(警察法42条2項)
⑫ 海区漁業調整委員会委員(漁業法95条・都道府県議会議員のみ)
⑬ 内水面漁場管理委員会委員(漁業法132条・都道府県議会議員のみ)
⑭ 港湾局の委員会委員(港湾法17条1項2号・ただし港務局を組織する地方公共団体のそれぞれの議会が推薦した議員の中から、一地方公共団体について1人の委員を限り、委員を任命する場合はこの限りでない)
⑮ 固定資産評価員(地方税法406条1項1号)
⑯ 固定資産評価審査委員会委員(地方税法425条1項1号)
⑰ 収用委員会委員・収用委員会予備委員(土地収用法52条4項)
⑱ 沖縄振興開発金融公庫役員(沖縄振興開発金融公庫法12条)
 ここで、農業協同組合の理事と地方公共団体の議員を兼職することが可能か疑義が生じる。
 農業協同組合法では、30条の5の本文で、「第10条第1項第3号の事業を行う組合を代表する理事、経営管理委員設置組合の理事並びに組合の常務に従事する役員(経営管理委員を除く。)及び参事は、他の組合若しくは法人の職務に従事し、又は事業を営んではならない」と規定している。しかし、同条ただし書で、農業協同組合の理事と兼職ができる場合として「他の組合の経営管理委員となる場合その他当該組合の業務の健全かつ適切な運営を妨げるおそれがない場合として農林水産省令で定める場合は、この限りでない」との規定が存在する。しかし、農業協同組合法施行規則79条の例外規定に地方議会議員が含まれていないことから、農業協同組合の理事と地方議会議員の兼職が禁止されることとなる。
 なお、農業協同組合の理事は常勤である場合はどのような場合でも地方公共団体の議員との兼職禁止となるが、非常勤の理事の場合は、当該農業協同組合に経営管理委員会がある場合には兼職禁止となり、経営管理委員会がない場合は兼職禁止とならないことに注意を要する。

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