2016.03.25 議会改革
『地方議会に関する研究会報告書』について(その9)
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之
はじめに
これまで8回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討した。前回は、『報告書』の「第Ⅲ章(1) 地方議会の議員に求められる役割」「第2節 議員の活動の支援機能のあり方」を検討している。今回も『報告書』に沿って、引き続きこの点を論じておこう。
研修による強化
『報告書』は、実現性があるかどうかはともかくとして、議会事務局のサポート機能の充実を図るために、いくつかの提案をしている。その第1が、全国研修機関などによる研修によって事務局職員の専門性の確保を図る方策である。つまり、自治体の行政職員として幅広い職務に人事異動する職員が、たまたま議会事務局に異動になっても、専門性は充分に持ち得ないだろう、という推論が作用しているようである。
もっとも、『報告書』では、議員も専門性を持つことが期待されており、一体、事務局職員とどのような関係になるのかは触れられていない。実は、『報告書』では、「議員の専門性を高めるための研修等の充実」で触れられており、議会事務局職員も議員も専門性を高めるべき、ということなのである。ただ、『報告書』では、議長の全国的連合組織(三議長会)、市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)、全国市町村国際文化研修所(国際文化アカデミー)などというような研修機会の積極的な活用が期待されるとしている。これを見る限り、議員に期待される専門性と、議会事務局に期待される専門性は、あまり違いがないということのようである。また、民間の研修組織を利用してはいけないのかについては、特に触れていない。
専門性が研修で身につくかどうかに関しては、いろいろな議論がある。特に、仕事をしながら身につけるというOJT重視の立場からすると、職員の職場外研修への期待は薄い。議員に関しても同様で、『報告書』自体が、「議員に求められる専門性は、通常、議会活動を通じて、議員としての活動年数等に応じて高められていく側面」があると指摘している。一種の年功主義・当選回数主義である。