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2023.06.26 議会運営

育児のため本会議に出席することが困難な議員が本会議を欠席したまま市長にオンラインで質問を行うことができるか/実務と理論

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総務省大臣官房総務課 秋山恭祐

1 はじめに

 昨今、地方議会の委員会へのオンラインによる出席については、一部の地方公共団体で取組みが始まっており、感染症のまん延や災害の発生等の緊急時に審議を行えることや、育児・介護の事情により議場に来ることが困難な議員も審議に参加できるようになるメリットがあると指摘される一方、表決の際の賛否確認や通信が途切れた場合の取扱い等について課題も指摘されている。
 一方、地方議会の本会議へのオンラインによる出席については、令和4年12月に岸田総理に提出された第33次地方制度調査会答申において、国会における対応も参考に、丁寧な検討を進めるべきであるとされると同時に、オンラインによる出席を可能とする場合、本人確認や住民に対する議事の公開をどのように行うか、特定の第三者による関与がないことをどのように担保するか等を検討する必要があるとされており、その際には、一部の団体で取組みが始まっている委員会のオンラインによる出席において生じた課題やその対応等の検証も行うべきであるとされたところである。
 そこで、本問では、育児のため本会議に出席することが困難な議員が、本会議を欠席した状態で、市長に対し、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法(以下「オンラインによる方法」という)で質問を行うことは可能かについて検討を行う。
 なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

2 地方議会の「定足数」及び「表決」について

 地方公共団体の議会は、地方自治法(昭和22年法律67号。以下「法」という)113条により、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことはできないこととされている。同条は、本会議を開くための定足数を定めたものであり、ここでいう「出席」とは、議員が現に議場にいることと解され、「会議を開くことができない」とは、議決、決定及び選挙の一切について、議会が会議を開いて活動状態に入り得ないことを意味すると解されている。
 また、法に特別の定めがある場合を除くほか、地方公共団体の議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決することとされている(法116条)ところ、ここでいう「出席議員」とは、採決の際「議場にある」議員と解されている。
 以上のように、法上、表決や定足数の要件として「出席」が求められているのは、本会議において地方公共団体の団体意思を最終的に確定させる上で、議員本人による自由な意思表明が、疑義の生じる余地のない形で行われる必要があるためと考えられる。
 なお、委員会については、あくまで本会議における審議の予備的審査を行うものであり、また、委員会に関し必要な事項は条例で定めることとされている(法109条9項)ことから、各団体の条例や会議規則等について、必要に応じて改正等の措置を講じた上で、委員会の物理的な出席が困難と判断される事情がある場合に、オンラインによる方法により委員会に出席することは可能と解されている。したがって、各議会の判断で、災害の発生や育児・介護等の事由により委員会への出席が困難な場合に、オンラインによる方法での委員会への出席を可能とすることもできると考えられる。

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