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2016.02.10 政策研究

【フォーカス!】アベノミクスの成果とは

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

アベノミクスの成果とは

 1月21日に開かれた経済財政諮問会議に内閣府が「アベノミクスの3年間の成果」を提出している。これをベースに安倍晋三政権の「成果」について考えてみたい。
 例えば、デフレ脱却・経済再生では、デフレ脱却は道半ばだが、15年以上続いたデフレ状況を転換(物価の基調はプラスに転換、名目GDP、実質GDPもともに増加)した。企業収益は過去最高水準に達し、法人実効税率の引き下げ、約60年ぶりの抜本的な電力システム改革などを実施したとしている。
 名目GDPは2008年4~6月期以来の500兆円超えとなり、実質GNI(国民が受け取った所得の総額)も安倍政権発足前の2012年10~12月期に比べ、21兆円増えてリーマン・ショック前を上回った。名目GNIはリーマン・ショックで失った約50兆円のうち約35兆円を取り戻した。
 2015年の倒産件数(8812件)は2012年に比べて約3割減少し、25年ぶりの低水準。失業者は内閣発足前よりも直近で53万人減少、大卒就職率は7年ぶり、高卒就職率は23年ぶりの高水準となっている。
 ローカル・アベノミクスでは有効求人倍率は全都道府県で上昇し、青森、秋田、徳島、高知、福岡、熊本、沖縄では過去最高を記録、失業者数も23道県で過去最少を記録した。
 訪日外国人旅行者も2015年は1974万人となり、2012年の1138万人から約2倍近くになっている。
 数字だけ見ていると「確かに成果が出ている」という気持ちになるが、底流にある大きなトレンドを見逃してはいけない。まず経済は日本一国だけで考えることはできない。2008年のリーマン・ショック以降、世界経済は回復、拡大の基調にある。
 日本では2011年の東日本大震災で落ち込んだ時期もあったが、トレンドとしては同じだ。つまり、世界経済の流れに乗る形で一定程度の回復は約束されている。その上で、アベノミクス政策による効果が上乗せされている。
 ただ、どれだけがアベノミクスの効果なのか、腑分けして示すことができないところに難しさがある。これは、倒産件数の減少についても言える。
 労働市場の状況については景気の回復だけではなく、労働人口の急速な減少と高齢化、東京圏への人口集中なども考慮に入れないといけない。有効求人倍率が過去最高を記録したからと言って、青森や秋田、高知などの人が手放しで喜んでいるわけでもあるまい。
 訪日外国人旅行者も同様に、海外旅行に行くことができる所得層が増えてきたという世界経済のトレンドに乗っかった上で、政府による円安の誘導、ビザ緩和が効いてきたというわけだ。
 確かなことは、経済が上昇基調にあるとき、安定しているときの政権はその流れ、いわば勝ち馬に乗ることによって、長期政権になる可能性が高いということだ。戦後の長期政権を見てもそう言えるだろう。
 安倍政権の政策の効果、あるいは政策立案能力の確かさを見るのは、これからが本番である。中国の景気減速、原油安によって世界経済が不安定化する中で、効果的な経済政策を打ち出すことができるのか。
 実際のところ、世界経済の主役が米中になっている今、トレンドに抗って日本だけの経済を維持することは難しいだろう。
 だが、安倍政権は外的要因による景気回復も含めて「安倍政権の成果である」という印象を与える言説を振りまいてきた。それが安倍首相の表現する「天に向かってブーメランを投げるような行為」になってしまうのか。政策が失敗しなくても景気が悪くなれば、安倍政権に対する批判は強まる恐れがある。これからが正念場である。
▼資料
・経済財政諮問会議資料
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2016/0121/shiryo_02.pdf

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