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2023.02.27 議会改革

第36回 これからの時代の自治体議会を展望する

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慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司

1 自治体議会の継続性と変化

 議会は、常に伝統と新しさが同居するシステムである。
 議会は、過去から引き継がれ、また、未来へと引き継いでいくものであり、多くの積み重ねや歴史の上に成り立っているものである。他方、議会の構成については、定期的に行われる選挙によって入れ替わり、そのたびに新たな構成でスタートすることになる。
 そもそも、議会制度は、静態的なものでなく国家社会に息づくものであり、その目的・内容・運用・機能は、理論的な普遍性とともに、特殊性・固有性・現実性・動態性なども帯び、そのあり方は国家社会の変化とともに変わっていく面もあるのであり、理想的な唯一の制度・形態といったものが規範的にも実際上もあるわけではない。
 一口に「議会」といっても、国と自治体、自治体の種類・規模、それぞれの国によって、多様なものとなっているが、その一方で、日本の自治体議会の特徴となっているのが画一性と固定性である。議会制度とは本来的にそのようなものと見る向きもあるようだが、決してそうではない。
 議会は、基本的な仕組みを維持しつつも、変化し続けるものである。そして、そのためにも、議会には新陳代謝や多様性が必要となる。
 議会が似通ったメンバーで構成され続けることになれば、議論が偏り異論が出にくくなったり、なれ合い、惰性、よどみ、しがらみ、癒着などを生じたりすることで、閉鎖的な組織やマンネリ化した運営となりかねない。そうならないためにも、定期的にメンバーが入れ替わり、多様な人によって構成されるとともに、古くて合理性を欠くものや内輪の論理・常識などが批判・更新されていくことが大事となるのである。
 ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが残した言葉に次のようなものがある。
 「脱皮する。─脱皮することの出来ない蛇は破滅する。その意見を変えることが妨げられた精神の持ち主たちも同様である。彼らは精神であることを止める。」 (1)
 もちろん、議会には、継続性や安定性も必要であり、先人たちの知恵や積み重ねを顧みないことは、底の浅いものとなりかねない。議会政治という営みは、時間軸の中で行われるのであり、これまでの経緯、実績等を継承し、それらによって条件付けられつつ、将来に向かって決定を行い、将来を条件付けることになるものである。しかし、それは過去の判断やしきたり・しがらみなどにとらわれることを意味するものではない。過去からの積み重ねが土台となるとはいえ、現在、そして将来の議会は、過去と同じほどに自由であると考えることもできるはずである。
 議会は、時代や社会の状況に合わせて変化していくものである。ただし、それは、常に改革を必要とすることを意味するものではなく、変化と改革とは異なる。議会改革が叫ばれているものの、常に成果を求めて改革を行っていくようなことは困難であり、また、妥当でもない。
 議会をサイクルとして捉えるならば、選挙期の4年がその運営・活動の基本的なサイクルとなる。自治体議会の中には、そのことを踏まえ、新しいサイクルが始まる際に4年間の活動計画を作成し、それに基づいて活動を展開しているところも見受けられる。そこでは、活動の基本となる目標が掲げられ、その実現のための取組みが定められることになるが、その際には、前のサイクルの取組みの実績や評価を踏まえつつ、新たな目標や取組みを定めることが必要となる。このため、サイクルの終わりに、総合的な評価を行い、次のサイクルへの引継ぎ事項・改善事項や提言をとりまとめ、次の議会に申し送りをすることなども行われている。さらに、4年のサイクルの基本計画を基にその着実な実施を図るため、年度計画を策定したり、進行管理の仕組みを設けたりするところもある。
 その工夫の仕方には様々なものがありうるが、議会としてのサイクルを意識し、それを活動にうまく生かすようにしていくことが求められ、そこでは常に、「継続」と「変化」との間で視線を往復させ、バランスをとりながら取り組んでいくことが大事となる。

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