2023.02.10 政策研究
第14回 政策(議会基本条例)と議会・議員(上)
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
議会基本条例
公共政策研究所によれば、議会基本条例は2006年5月に制定され嚆矢(こうし)とされる「北海道栗山町議会基本条例」をはじめ、都道府県・市区町村を含む1,788全国自治体中970自治体で制定されている(2022年4月1日現在)(http://koukyou-seisaku.com/image/2022.4.1jitigikaisekoujyoukyou4.pdf〔2023年1月24日確認〕)。
このことは、議会基本条例が自治基本条例と比べ速い速度で広がっていることを示している。なお、議会基本条例は、自治体の自主条例である。神原勝は、松下圭一の「自治体は変わるか」に触発されて、2001年に「議会基本条例」という言葉を造語し、翌2002年には条例内容の核心となるべき、①議会と市民の双方向性の確立、②議会と首長の機関緊張のシステム化、③議員間討議の推進の重要性を指摘して、これらの実施と相乗効果による議会再構築を構想したという(神原 2019:304)。
そして、議会基本条例は、「議会の役割(使命)を宣言するとともに、議会に対する市民の権利を具体化し、議会運営の全体像について、その基本となる仕組みや方針を規定した条例」である。そこでは、市民と議会の関係、議会と首長の関係、議員間の関係などが明示される(田中 2014:7)。議会基本条例は、自治基本条例の基幹的関連条例といえる(神原 2019:290、田中 2022:2)。
自治基本条例が国の憲法と対比されるように、議会基本条例は国の国会法に相当するものと見ることができる。日本国憲法では、国会について、その役割、構成、議員の任期などが規定されている。この規定を受けて、国会法では、召集、会期、役員、議員、委員会、会議などの規定が置かれている。議会基本条例には、前文、議会及び議員の活動原則、市民と議会の関係、議会と行政の関係、議会の合意形成及び自由討議の保障、議会の組織、議会の運営、議員の身分・政治倫理、議会事務局の体制及び見直しなどの規定が含まれていることが多い(田中 2014:8)。また、議会基本条例は、議会改革条例の意味合いを持つ(田中 2014:8)。
ところで、議会基本条例は、自治基本条例と同様に、強制的権限の行使を伴わないという性質を持つ。そのため、関係者(市民・議会・行政)には条例の制定及び運用に当たり、強制的権限の行使を伴う条例よりも、規範意識が強く求められるといえよう。