2023.01.12 政策研究
第13回 政策(総合計画・総合計画条例)と議会・議員
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
議会・議員の短期的視野・狭窄(きょうさく)的視野に陥る可能性
自治体議員には、ややもすると短期的視野・狭窄的視野に陥る可能性がある。特定の顔見知りの人の顔が浮かび、早くその人を助けたいと思う気持ちがその可能性を高めるのかもしれない。また、4年に一度ある選挙がそうさせるのかもしれない。議員に、このような傾向(特質)があるとすれば、議員で構成される議会も短期的視野・狭窄的視野に陥る可能性がある。しかし、後述するように総合計画及び総合計画条例は、そのことを避ける道具になりえると思える。そこで、本稿では総合計画・総合計画条例と議会・議員について考える。はじめに、総合計画から考えてみよう。
総合計画とは
総合計画は、「当該自治体の区域に必要となる市民、団体・企業、自治体、国、国際機構など多様な政策主体が担う公共政策の全般に関して、複数年度に跨〔またが〕って決定した基本構想を含む一覧文書」(田中 2015b:156)であり、自治体の政策全般を制御(コントロール)する。この定義における公共政策には自治体・中央の政府政策を含む。このことから、予算や条例などの政策決定権を持つ議会においても、「総合計画は行政だけの計画・手法であり、議会・議員は関係ない」と見過ごすことはできない。後述するように、議会・議員は総合計画を活用して行政を制御することができる。
また、総合計画は、国からの策定義務はないが、自治体のデファクト・スタンダード(実質的標準)として、おおむね全国の自治体において策定されている。そして、その内容については自治体ごとに微妙な差異があるものの、総合計画には、アイデア(理念)、地域の将来都市像や施策の体系をはじめ、実施すべき施策や実施のための体制、プログラムなどが示されており、自治体(市民・自治体政府〈議会・行政〉)にとって重要な計画である。分野別の計画だけでなく、地域別の計画やリーディング・プロジェクトを位置付けている総合計画も少なくない。
総合計画は、当該自治体の自治体政府計画であるとともに、当該地域において最も上位に位置付けられる自治体地域計画でもある(田中 2015b:165)。そして、総合計画は政策間の差をつけるものでもあることから、分野別の計画を束ねただけでは総合計画にはなりえない。
総合計画については、片山善博のように計画そのものに懐疑的な議論もある(片山 2010:14-15)。しかし、日本の自治体政府は二元代表制のもと市民の信託に基づく組織(体)である。組織には、運営のための組織規範が必要であり、自治体政府にもその規範が必要となる。そこには、どの規範を優先させるのかという判断が明示された最高規範が必要となる。その最高規範が自治基本条例である。これと同様に、自治体ないし自治体政府が策定する計画においても、計画としての最高規範(=最上位計画)である総合計画が必要である(田中 2018b:33)。
また、最上位計画としての総合計画は、鈴木洋昌がいうように国の指導関与がややもすると断片化・分断化し行われる中で、地域でこれらを総合化していく重要性は高いといえる(鈴木 2019:199-200)。