地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2015.12.25 議会改革

『地方議会に関する研究会報告書』について(その6)

LINEで送る

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学) 金井利之

はじめに

 これまで5回にわたり、総務省に設置された「地方議会に関する研究会」の最終報告書である『地方議会に関する研究会報告書』(以下『報告書』という)を検討した。前回までも『報告書』の順に従ってテーマを取り上げてきた。今回も、引き続いて、この『報告書』を検討してみよう。
 『報告書』の「第Ⅲ章(1) 地方議会の議員に求められる役割」「第1節 地方議会の議員に求められる役割・資質」は、代表性と専門性であるとまとめられている。前回は「代表性」または「代弁性」について検討したので、今回は『報告書』に沿って、「専門性」を論じておこう。

専門性の意味

 『報告書』によれば、議員に求められる資質として専門性が挙げられている。しかしながら、専門性の意味は幅広い内容を持つものである。『報告書』によれば、
 ① 特定の政策分野に関する高い専門的知見を有している
 ② 地域の政策課題を的確に把握し、必要な情報収集を行う
 ③ 議会において政策提言、立案等を行う
 ④ 合議体の議会において、意見集約し、合意を得るための調整能力等が列挙されている。
 ①は通常の意味の専門性に最も近いが、専門性=「特定の政策分野に関する高い専門的知見」というように、同義反復になっている(傍線筆者)。「特定政策分野に関する知見」とは、国の政治家でいう「族議員」のことである。しかし、与党国会議員は500名の規模でいるから政策分野ごとの分業も可能であるが、通常の自治体議会で、特定政策分野に精通することはほとんど不可能である。せいぜい漠然と、「福祉に強い」とか「地域活性化に詳しい」という程度にしかなり得ない。しかも、特定政策分野に精通するということは、しばしば、国の政策に精通する、もっといえば、国の補助メニューに精通する、ということになりがちであり、地域住民のニーズから離反する上から目線の専門性に帰着することになりやすい。
 ②は、自治体特有の地域に関する知見を総体的に持つことであり、議員に限らず、首長や職員などの、自治体為政者に求められる知識といえよう。この点は、国の政治家・官僚や専門家・学者などに対する比較優位性となり得るものである。とはいえ、「地元学」というような、地域の知識体系は必ずしも明確には存在していないことが多いし、議員がこうした専門性に自覚的であることは少ない。しかし、生まれ育った地域で生活したという経験そのものが持つ、OJTならぬOLT(on the life training)の効果はあり得よう。生きることは、すなわち学ぶことであり、その意味で議員は自然と専門性を身につけているべきといえよう。もっとも、職員もこうした専門性を持つべきとするならば、議員がこうした専門性を自ら持つ必要はないのかもしれない。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 428

日本銀行開業(明治16年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る