地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2022.11.25 議会改革

第33回 国等の政策にコミットする

LINEで送る

慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司

1 自治体議会からの問題提起・政策発信

(1)議会の意見書
 自治体議会は、立法機関として、条例を制定して、政策を決定できることはいうまでもないが、それだけではなく、当該自治体の政策はもちろんのこと、当該自治体に関係する問題や国の政策・他の自治体の事務などについて、機関として意見を表明することもできる。
 そのための方法として地方自治法により規定されているのが、意見書の提出である。
 これは、住民の代表機関である議会が、一定の事項についてその意思や見解を表明する権限である意見表明権の一つとされているもので、議会が、その自治体の公益に関する事件について、意見書を国会又は関係行政庁に提出できるとするものである(地方自治法99条)。
 その場合、自治体の公益に関する事件である限り、意見書の内容については、その自治体の事務であるか、国の事務あるいは他の自治体の事務であるかを問わないものとされている。何が「公益」に関することであるかは、社会通念などにより個別具体的に判断するほかなく、当該自治体の不特定かつ多数の人々の利益に関係するすべての事項が含まれうるといえるが、あくまでも当該自治体に関係するものとされていることに留意する必要があるだろう。
 また、意見書の提出先は、国会又は意見書の内容について権限を有する行政機関であり、行政機関については、国の機関であるか、地方自治体の機関であるかを問わず、当該自治体の行政機関も含まれるものの、裁判所に意見書を提出することは認められていない。市町村議会が、知事など都道府県の機関に意見書を提出する例も少なくないようだが、都道府県議会については、地方自治法の規定を形式的に読む限り対象とはならないことになるのではないかと思われる。
 この点、従来においては、意見書の提出先は関係行政庁のみとされていたが、2000年の地方自治法改正により、国会が提出先に追加されている。地方分権の進展により自治体議会の担う役割が大きくなってきていることから、その活性化に資するため、国会に対して意見書を提出することができることとしたものであり、その改正の趣旨として、「地方公共団体の公益に関する事件については、国会で審議できるものも多々あることから、地方議会が国会に対して意見書の提出ができるようにすることも、議会の活性化に資する」との説明がなされている(1)
 ちなみに、意見書の提出の議決は、自治体の団体意思の決定ではなく、その機関としての議会の意思の決定となることから、その発案権は議員に専属し、長にはない。また、意見書を提出する際の差出人の名義は、議会を代表する議長とされるのが一般的である。多くの自治体議会では定例会の最終日に意見書をまとめて議決するのが通例のようであり、3月、6月、9月、12月の時期に提出件数が多くなる傾向があるようだ。なお、国会に対する意見書については、衆議院では基本的に受領は開会中に限られているのに対し、参議院では閉会中も受理を行っている。
 提出された意見書については、法的な拘束力をもつものではない。すなわち、意見書の提出があった場合には、国会や関係行政庁はそれを受理する義務はあるが、それに何ら拘束されることはなく、意見書に対して回答する義務もないとされる。そして、提出された意見書をどのように取り扱うかは、それぞれの機関の判断に委ねられている。
 実際、国会では、その件名及び提出議会名を衆議院・参議院の公報にそれぞれ掲載し、関係委員会に参考送付する取扱いとなっている一方(2)、内容の審査等は行っていない。国の関係行政機関においても、例えば内閣総理大臣や内閣官房長官宛てに提出された意見書の場合は、他の府省庁に回付するものを除き、数件ずつ連記され、関係部署に供覧されるようであるが(3)、それぞれの行政機関でどのような取扱いや処理をしているのかは不明であり、政策立案等に活用されている可能性は低いともいわれる(4)
 意見書を提出した自治体議会の側も、その後のフォローもすることなく、出しっぱなしとなっているところが多いようだ(5)。この点、福岡県議会では、意見書提出後の国の対応状況等について独自に調査し、報告書としてまとめているとのことであり(6)、それも踏まえて、2022年3月には、意見書の国の政策立案への活用と活用結果の公表を要望する「地方議会が提出する意見書の積極的活用を求める意見書」を提出している。同様の意見書は、2021年に、豊中市、栃木県、浜松市、鹿屋市、兵庫県等の各議会からも提出されているが、その背景になっているのが、全国三議長会での決議ではないかと思われる。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る