2022.11.10 政策研究
第11回 政策(教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等)と議会の責任・権限
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
政策と議会の責任・権限
本稿では、政策(教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等)と議会の責任・権限について考える。教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等の政策については、行政委員会問題、NIMBY問題、人口減少問題、共同処理問題、エッセンシャルワーカー問題がある。これらの問題については、上記の政策以外にも、教育委員会以外の行政委員会・消防・下水道等の政策に類似の問題がある。
さて、議会では、政策を決定することはあっても、政策を実施することはない。そのため、実施に必要となる政策資源の準備を行うことは不要である。実態として実施に協力することはあるかもしれないが、責任を持って実施するのは行政であって議会ではない。議会には、「議決責任」と「行政(実施)制御責任」があり、それらの責任の裏返しとして「議決権」を持ち「行政(実施)制御権」を持つが、「行政(実施)制御権」はあくまでも「制御権」であり「実施権」ではないからである(「議決責任」と「行政(実施)制御責任」については、「講座 自治体議員のための政策型思考! 第8回 評価と議会」中の「15 『議会の責任』と『議会の評価』」議員NAVI 2021年5月12日号を参照(https://gnv-jg.d1-law.com/login/article/20210512/27161/〔2022年10月25日確認〕))。
そして、議会が「議決責任」を果たすためには、議論が必要になる。特に、二元代表制のもとでは、議会の存立構造は市民の信託にあることから、常に市民との議論が必要となる。独任制機関である首長をトップとする行政に比べて、合議制機関である議会は、多様な意見を顕在化し議論することを行いやすい。なぜなら、行政には首長と部下の上下関係があるのに対し、議会を構成する議員は互いに対等だからである。議会は、議論することに注力することが求められる。
もちろん、行政も市民の信託により成り立っていることから、行政内部の議論だけではなく、常に市民との議論が必要となるが、二元代表制のもとでは議会が「議決権」を有する事項については、市民と議会の議論に基づく議会の判断が行政の判断に対して優先される仕組みとなっていることを忘れてはならない。
このような特質を有する議会が、上述の問題(行政委員会問題、NIMBY問題、人口減少問題、共同処理問題、エッセンシャルワーカー問題等)を解決するためには、どのような取組みが必要になるであろうか。そして、そのためには、どのような議会改革が求められているのだろうか。