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2022.10.25 政策研究

第9回 地域新電力会社はカーボンニュートラル達成の近道か?(2)

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前所沢市議会議員 木田 弥

【今回のテーマから考えられる一般質問モデル案】
○「脱炭素先行地域」の計画に応募するのであれば、GHG(温室効果ガス)排出量削減と新産業・雇用創出の両方を目指すのではなく、GHG排出量削減を最大化する方向で検討するべきではないのか?
○(地域新電力会社(以下「地域新電力」という)を検討している地方公共団体では)外部からの電力調達制度などが目まぐるしく変化するなど、当事者がコントロールできない事情に左右されるリスクについてどう評価しているのか?
○(地域新電力に投資している地方公共団体では)ロシアによるウクライナ侵攻などにより今後の調達電力価格の先行きが見通せない以上、当事者がコントロールできない事情に左右される地域新電力からは名誉ある撤退も考えるべきではないか?

 前回は、地方公共団体が出資する地域新電力が、脱炭素先行地域を進める上での仕組みとして、またGHG排出量削減と新産業・雇用創出という一挙両得を目指す手法として理論的には有効のように見えるが、なかなかうまくことが運ばないことを、実際の事例を交えて紹介した。

「脱炭素先行地域」計画でも地域新電力に頼らない電力供給が過半に

 今回は、地方公共団体が出資する地域新電力の経営が、当初の計画どおりに進まない事情について検討したい。そうした事情を乗り越えるために、発電した電気を系統接続しない、つまり既存の送配電会社が敷設する電柱を通して電気を売電せず、自営線を敷設してそのまま自分たちで使う方式、あるいは、オフサイトPPAと呼ばれる、自らの敷地以外で発電し、需要場所へ供給する手法などを採用する地域が増えているようだ。
 2022年4月に公表された第1回の「脱炭素先行地域」計画提案書でも、26の選出された地域のうち北海道石狩市、鹿追町、秋田県及び秋田市、大潟村、埼玉県さいたま市、神奈川県横浜市、新潟県佐渡市、長野県松本市、静岡県静岡市、愛知県名古屋市、滋賀県米原市、兵庫県尼崎市、鳥取県米子市及び境港市、高知県檮原町、福岡県北九州市ほか、鹿児島県知名町及び和泊町と、ざっと確認した範囲で16の地域が、発電した電力を系統接続せずに自営線で自家消費することを計画している。地域新電力の設立を計画に盛り込んでいる地域と重複している地域もあるが、10地域が地域新電力の活用ないしは新設を表明しているのに比べても、自営線やオフサイトPPAによる電力利用を選択する地域の方が多いようだ。自営線を利用する、あるいはオフサイトPPAを活用するなどして電力供給を行えば、国の電力自由化に伴う頻繁な制度改正の影響を受けにくく、計画当事者がコントロールできない事情に左右されずに政策目的を達成できる可能性が高まるためだろう。

地域新電力の苦境について首長が国会で証言

 図らずも、地域新電力への投資を行った埼玉県所沢市長が、地域新電力の苦境を国会で陳述している。
 2022年4月1日に開催された第208回国会衆議院環境委員会における「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」についての参考人質疑において、以下のようなやりとりがなされた。
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畦元将吾委員「カーボンニュートラルの実現のために、今回の法改正の内容に限らず、あらゆる政策を総動員して取り組んでいかなければならないと考えております。何か、参考人の方々のアイデア、御提案があれば御教授ください。」
藤本正人〔筆者注:所沢市長〕参考人「地域新電力を支える仕組みをお願いしたいと思います。再生可能エネルギーを何とかしようということでいろいろなところで地域新電力会社が立ち上がりましたけれども、今は市場の電力が高くなって、最終的には、生き残れるのは体力のある大企業で、今までどおりの電気というふうになります。ですので、この動きを止めないような仕組みをお願いできればと思っています。」
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