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2022.09.26 政策研究

第30回 多数性(その4):類似団体

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

尺度と類型化

 多数ある自治体を理解するために、自治体間の異同を顕在化させることがある。ある尺度を用いれば、連続的に自治体の異同・遠近を位置付けることができる。例えば、住民人口を尺度にすれば、全ての自治体は住民人口数に応じて連続線上に位置付けられる。統計的に、人口と他の要素との相関分析などをする際には、人口は連続線で存在することで充分かもしれない。1人単位まで識別すれば、同じ自治体はまずありえない。
 もっとも、1人単位での連続線上の差異化は、我々の理解という観点で有意味ではないとすれば、ある程度のまとまりで、段階的・不連続的に位置付けることになる。例えば、人口1,000人未満、1,000人以上5,000人未満、5,000人以上1万人未満、1万人以上5万人未満、10万人以上30万人未満、30万人以上50万人未満、50万人以上100万人未満、100万人以上200万人未満、200万人以上、などという段階に分けることができる。もっとも、この線引きが、なぜ「1万人」なのか、なぜ「8,000人」ではないのか、などという疑問がありえよう。
 人口段階による類型化は、自治制度上の自治体の類型と連動する面がある。例えば、政令指定都市は「大都市」と通称されているが、世間相場では「人口100万人」が一つの目安である。法制上は人口50万人以上であれば、政令指定されることは可能ではあるが、永きにわたって運用上は人口100万人を目安にしてきた。人口100万人を下回っているときでも、「100万人弱」、あるいは、「近いうちに100万人に届くだろう」などという発想があった。もっとも、21世紀に入ると、政令指定都市は「安売り」、「値崩れ」が起き、さらに、「平成の大合併」の呼び水にするという政策的誘導も加味されたので、「人口70万人程度でもよかろう」という運用になった。こうして考えると、人口尺度や人口による段階別類型化は、やはり、制度上の自治体の類型とは別のものであろう。

類似団体と職員数

 自治制度官庁(自治省→総務省)では、市町村について「類似団体」という類型化を行ってきた。例えば、市町村の職員数を比較・分析するためには、あまりに状況の異なる市町村と比べても意味がないので、ある程度、似た市町村と相互比較することが有用に思われる。つまり、環境要因が似ているからこそ、自治体の自治運営の差異が見えてくるわけである。そうでなければ、環境要因の差異によって違いがあるだけだ、ということを否定できない。
 例えば、単純に職員数を比較しても、人口が大きな自治体であれば、人口の小さな自治体と比べて、職員数は多くて当たり前であろう。しかし、現実に重要なのは、同じような状況の市町村の中で、どの程度の職員数の多寡・差異が見られるかである。例えば、実際の定員管理の参考にとっては、人口規模が近い団体と比較することの方が、重要と思われるからである。こうして作成されているのが、「類似団体別職員数」である(1)
 類似団体別職員数は、一般行政部門及び普通会計部門(大部門~小部門)について、人口と産業構造(産業別就業人口の構成比)から類似する市区町村をグループに分け(類型区分)、そのグループ内での人口1万人当たりの職員数の平均値(加重平均値)を算出し、職員数の比較を行うものである。他の市区町村との比較を行う観点から、市区町村ごとに実施している事業にばらつきがある公営企業等会計部門の職員は除外している。
 類似団体のグループ分けが本論の焦点である。類似団体別職員数では、全市区町村を指定都市、中核市、施行時特例市、特別区、その他の一般市、町村に区分し、その他の一般市(以下、単に「一般市」という)と町村は、下表のとおり人口と産業構造に応じ、一般市を16類型に、町村を15類型に区分している。つまり、まずは、行政権能(事務権限など)が異なる市区町村を制度によって類型化した上で、その中で、表のように、人口と産業構造(Ⅰ次、Ⅱ次、Ⅲ次産業構成比率)という二つの尺度(分類軸)に基づいて、一般市と町村の類型化を行っているわけである。
 
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