2022.08.25 政策研究
第29回 多数性(その3):自治体の業界団体
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
ナショナル・センター
自治体は、自治体としては同じ種類の団体であるが、それが多数性を持っている。それゆえ、同じ自治体として、多数の自治体群が一体となって団体を構成することが考えられるだろう。全国的に自治体を組織化できれば、ナショナル・センター(全国中央組織)である。そして、全ての自治体を集約する団体があれば、単一の自治業界団体といえる。
ナショナル・センターとして著名なのは、まさに自ら「全中」と名乗っている「一般社団法人全国農業協同組合中央会(JA全中)」である(1)。また、経済界・財界の「総本山」は、「一般社団法人日本経済団体連合会(日本経団連)」である(2)。電気事業連合会、全国銀行協会、全国建設業協会、日本自動車工業会のような業界別の全国団体も多数あるが、そうした業界団体などが、さらに、ナショナル・センターのナショナル・センターとして、頂上組織として、日本経団連を構成している。労働界の場合には、戦後長きにわたって、総評系と同盟系にナショナル・センターが分かれていたため、いわゆる労働戦線統一が模索され、「日本労働組合総連合会(いわゆる「連合」)」が1989年に結成された(3)。もっとも、そのときに連合に集約しきれず、「全国労働組合総連合(いわゆる「全労連」)」も1989年に結成されている(4)。その意味で、労働界のナショナル・センターは一つになっていない。
自治体の場合には、全国団体は、全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会、全国町村議会議長会の六つがあり、「地方六団体」と総称されている。執行機関・議事機関の機関対立主義で首長側と議会側(いわゆる「三議長会」)の二つ、そして、自治体の種類としての都道府県・市・町村の三つで、2×3=6の組織化がされている。地方六団体は、共同して行動することも多いが、日本経団連のような統一頂上団体を組織化しているわけではない。とはいえ、1963年8月23日に、地方六団体が集まって、「地方自治確立対策協議会」を設置している。その前身は、1955年決定の「地方財政確立対策協議会」である。