2022.06.27 政策研究
第27回 多数性(その1):関係住民と関係自治体
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
自治体と唯一性
連載第15回から第20回まで、自治体の中心性について触れたところである。このうち、国に中心性を、自治体に周辺性を見いだすものが、地動説的自治観である。反対に、自治体を中心に据えて、国を周辺に配置するものが、天動説的自治観である(第15回)。天動説的自治観に立つ場合には、自治体は中心となっているのだから、中心とは一つに限るという暗黙の前提に立てば、自治体は唯一無二になるように見える(唯一性)。これに対して、地動説的自治観に立つ場合には、中心となる国が唯一無二の存在であって、自治体は多数存在すること(多数性)が暗黙のうちに想定されよう。太陽は唯一であるが、惑星は多数である、という太陽系のアナロジーである。
もっとも、天動説的自治観に立っても、周辺に配置されるのは国だけではなく、他の自治体も周辺に配置される。したがって、自治体が多数存在すること(多数性)は否定されるわけではない(第15回)。また、地動説的自治観に立っても、自治体が多数存在することを自明視する必要はない。比喩的にいえば、太陽は唯一であるが、地球も唯一である。その他諸々の惑星・準惑星・小惑星たちは、地球ではない。つまり、地球を惑星の仲間として、多数ある惑星という集団のうちの一つと認識するかどうかは、あくまで観察者の位置付けの問題だからである。
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