2022.05.25 議会改革
第28回 自治体議会と多様性(1)
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
1 多様性が希薄な政治
議会は、代表機関として、社会的・政治的状況等を背景に、多様な人々によって構成され、実在する多様な民意を公正に反映し、これを効果的に集約して意思決定を行う役割を担っている。しかしながら、自治体議会に関しては、議員のなり手不足だけでなく、その構成の偏りについても問題とされるようになっている。構造的な問題として重要な課題といえるが、他方で、それは選挙の結果であるとして、また、今後の自分たちの選挙への影響や候補者調整の困難さなどもあってか、どこか政治の側の反応は鈍いところがあるようにも見える。
すなわち、都道府県議会と市議会と町村議会、あるいは大規模自治体と小規模自治体による違いはあるものの、中高年男性の議員が圧倒的に多いという現実である。
例えば、都道府県議会議員については、2019年7月現在、全国平均年齢は56.7歳であるが、年齢層で見ると、最も多いのは60歳以上65歳未満の17.3%、次いで55歳以上60歳未満が15.1%、65歳以上70歳未満が13.6%、70歳以上も12.1%となっており、他方で30歳未満は0.3%、30歳以上35歳未満は1.7%、35歳以上40歳未満は5.5%にとどまる。女性議員の割合は、2021年8月現在で11.3%となっている。
他方、市議会議員については、2021年7月現在、平均年齢が59.8歳、60歳~70歳未満が35.4%、50歳~60歳未満が23.6%、70歳~80歳未満が20.1%となっており、30歳未満は0.4%、30歳~40歳未満は4.7%にすぎず、女性議員の割合は17.2%となっている。町村議会議員についても、2021年7月1日現在、平均年齢が64.8歳、60歳以上70歳未満が40.5%、70歳以上80歳未満が34.0%、50歳以上60歳未満が13.4%となっており、25歳以上30歳未満は0.2%、30歳以上40歳未満は2.0%であり、女性議員の割合も11.6%にとどまっている(1)。
その割合は低下傾向にあるとはいえ、農林業、建設業、卸売・小売業などの自営業者が多いのも特徴となっており(2)、それは男性議員でより顕著となっている。
男女共同参画の観点からしばしば指摘されるように、日本において女性は有権者の約52%を占めるが(3)、自治体議会議員に占める女性の割合は、特別区議会のように30%前後となっているところもあるものの、全体としては上記のとおりであり、女性が1人もいない議会が、2020年12月31日現在で、市議会で29(3.6%)、町村議会で269(29.0%)に上る。