2022.05.25 議会運営
第83回 年度経過後の専決処分と遡及適用の是非
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
年度経過後の専決処分と遡及適用の是非
A市において令和4年5月1日に財政課長から、「令和3年度の補正予算についての専決処分を行いたい」との連絡があり、令和3年度中には専決処分を行っていなかったが、地方公共団体は令和3年度の出納閉鎖期間が5月31日まであるので、出納閉鎖期間中であれば専決処分の日を3月31日に遡って行うことができるとの説明であった。このような専決処分は有効なものであるといえるのか。
地方自治法(以下「法」という)が規定する専決処分権は、議会と長の間の調整手段を規定した法179条の専決処分権と、法180条による地方公共団体の行政の能率的、合理的な運営を図ることを目的とする専決処分権の二つに分かれる。
法179条における専決処分は、議会が地方公共団体の意思決定機関、政策決定機関としての機能を十分に果たさない場合に、長が議会に代わり本来議会の権限に属する事項について権限を行使し、地方公共団体の意思決定を行うものであるといえる。
それに対し、法180条の専決処分は、行政の能率的、合理的な運営を図るために、本来なら議会の権限であるものを議会自身の判断により長に委任して行わせるものであるといえる。
【法179条】
① 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第162条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第252条の20の2第4項の規定による第252条の19第1項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。
② 議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
【法180条】
① 普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。