2022.04.25 政策研究
第3回 我がまちの温室効果ガス排出量を計算してみよう(1)
前所沢市議会議員 木田 弥
【今回のテーマから考えられる一般質問モデル案】
〇(実行計画(事務事業編)を策定していない地方公共団体では)なぜ計画を策定しないのか?
〇(実行計画(区域施策編)の策定義務がない地方公共団体では)我がまちでも、(策定義務がないにもかかわらず計画を策定した)◯◯市のように計画策定を検討するべきではないか?
〇(実行計画(区域施策編)の策定がすでに行われている地方公共団体では)環境省の「部門別CO2排出量の現況推計」と計画とに顕著な差異はあるか? あるとすればその理由は?
我がまちの温室効果ガス排出量の算出は時間をかければできる
今や一定規模以上の企業では、B/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)などの財務諸表に加えて、自社の企業活動から排出される温室効果ガスの排出量及びその削減計画までも開示するなど非財務データの公表が当たり前になってきている。民間の感覚を大事にする首長ほど、温室効果ガス排出量の算出に意欲的な印象だ。
先日、ある関東圏の知り合いの首長を訪ねた。そのまちでも首長が民間感覚を重視していることからか、(地球温暖化対策の推進に関する法律では中核市未満の市であるため、策定義務はないのだが)「環境政策の充実のために、(事務事業にとどまらず)市区域全体からの温室効果ガス排出量を算出した」とのことであった。算出のためにコンサルタント業者に依頼。「ずいぶんと費用がかかった」と嘆いていた。しかも出てきた結果を見たところ、結果そのものは分厚い報告書にまとめられたが、算出方法は、どの市区町村も共通のようで、その共通の計算式に、自分たちのまちの実際の値を統計データから引用して代入することで算出可能、というからくりも理解できたそう。
「そんなことならば、私(筆者)にいってくれたら計算してあげたのに」と返答した。実際は、そう簡単なものではないし、そんなヒマもないのだが、温室効果ガス排出量の算出は、環境省のサイトも充実しているので丁寧に読み解けば理解できるし、算出のための数字も統計情報がもとになっているため、部外者でもその気になればある程度算出できる。
ただし、「今後追加的な対策を見込まないまま推移した場合に当たる現状維持ケース(BAU)」の推計、対策を施した場合の排出削減量の算出、さらに森林による吸収量の算出は、さらに複雑なので、自力での算出は難易度が高いようだ。
環境省のサイトの充実ぶりは、見事だ。サイトさえ見れば自力で算出できるようになっている。その分、複雑になり、読み解きにくくなっているほどだ。
例えば、「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定・実施マニュアル」本編は100頁、策定手法編に至っては297頁と膨大である(環境省「地方公共団体実行計画策定・実施支援サイト」(https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/))。
これら膨大なマニュアルすべてに目を通す必要はなく、我がまちに必要な部分だけを参照すればよいので、基本となる考え方がしっかりと理解できれば十分である。そこで、数回にわたって、まずは基本となる考え方を説明したい。
温室効果ガスの排出量算出の仕組みの基本を理解すること。続いて、議員が単独で、あるいは会派内で、気になる部分だけでよいので、手と頭を動かして現時点での排出量を部分的に算出すること。それができれば、執行部の出してくる算出結果や、算出のためのコンサルタントへの委託調査事業の予算の妥当性、成果の精度など、関連予算審議も充実することが期待できる。