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2015.07.10 政策研究

【フォーカス!】後追い行政

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

後追い行政

 静岡県富士宮市で「富士山景観自然環境と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」が6月30日に成立した。大規模な太陽光発電所(メガソーラー)と富士山の景観との調和を図るのが狙いだ。
 条例では、太陽電池モジュール総面積1000㎡以上の太陽光発電、高さ10m以上の風力発電の事業については、60日前までに市長への届け出を義務付けた。事業には市長の同意が必要としている。
 一方で市長は、①地域を象徴する優れた景観として良好な状態が保たれている②豊かな自然環境が保たれ学術上必要な自然環境を有している―などの地域を「抑制区域」に指定できる。抑止区域内での事業は原則として認めないが、モジュール総面積1万2000㎡以下で抑制区域内の規則で定める区域ではこの限りではないとした。
 世界遺産の富士山を巡っては、2014年3月に山梨県が自然環境保全条例を改正、「富士山北麓世界遺産景観保全地区」を指定し、事業者に事前協議を義務付けている。静岡県側の富士宮市や富士市も行政指導でメガソーラーの設置自粛を求めてきたが、実効性を考え条例での規制に踏み込んだといえる。
 条例での規制は温泉地の湯布院で知られる大分県由布市が最初だろう。2014年1月に「自然環境等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」を制定、5000㎡を超える事業者は市長に協議を求めている。
 その後、長野県の自治体や岡山県真庭市などである。このほか、長野県は一定規模以上のメガソーラーをアセス対象にすることで景観面の問題をクリアできるか検討している。
 これら自治体の対策は後追い行政との批判もあるが、再生可能エネルギーでできた電力の固定価格買い取り制度(FIT)に基づいて国が急ピッチに進めた自然エネルギー普及の後始末をさせられている面もある。
 FIT制度がスタートしたころは、太陽光発電の買い取り価格も高く、利益も保証されていたこともあり、広大な空き地を持つ企業、つまり埋め立て地に遊休地を持つような大企業には有利だった。脱原発の動きもあり歓迎された。
 その後、山間部の草地や高原への立地も始まり景観面の課題が引き起こされた。確実に利益を得ているのは初期に投資した事業者で、その後に始めた事業者はだんだんと手続きが煩雑になり、景観面での対応も迫られることになった。もともと土地を持っていた先行型の投資に限りなく有利に働いた政策だった。

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