地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2022.02.25 政策研究

第1回  自治体議員も人ごとではいられなくなるカーボンニュートラル(前編)

LINEで送る

前所沢市議会議員 木田 弥

 地球環境問題、中でも地球温暖化問題は、かつての公害問題などと違い、被害が見えにくいため、なかなか議会で質問などで取り上げられてこなかった。しかし、日本もカーボンニュートラルを2050年に達成することを宣言したことから、地方公共団体においても本格的な対応を迫られている。  
 そこで本講座では、まず、冒頭に議会における質問案を示し、続いて、なぜそのような質問をするべきなのかについての解説を行う。ぜひとも積極的に本講座を活用いただき、地球環境問題通といわれる議員を目指してください。

今回のテーマから考えられる一般質問モデル案
〇政府は、2030年温室効果ガス排出量46%削減、2050年カーボンニュートラル達成を国際公約している。我が市もこの政府の公約に合わせて温室効果ガス排出量削減を目指す必要性を感じているのか?
〇我が市の事務事業における現状の温室効果ガス排出量は? 今後の温室効果ガス削減のための目標設定は?
〇我が市では、市域からの年間の温室効果ガス排出量を算定しているのか? もし、市域からの排出量を算定していないとしたら、算定を実施する必要があるのではないか?  

 なぜ、これらの質問案が重要なのか、また、質問案作成のために知っておくべく事実(ファクト)を以下に説明する。

COP26は対岸の火事ではない  

 新型コロナのために1年間延期となった、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が英国グラスゴーで10月31日から11月13日まで開催された。  
 「地球温暖化問題などは、一部の環境問題好き議員に任せておけばいい」、「そもそも温暖化の被害は地域にはないので市民もピンとこない」、「温暖化対策のことは国の仕事、地方には関係ない」、「地球温暖化問題にいくら取り組んだところで、選挙では票にならない」、「目の前の新型コロナ感染対応や10万円の給付金対応に追われていて、とても地球全体のことなど考えられない」──そんな声が聞こえてきそうだ。  
 確かに、筆者が所属していた市議会で、地球温暖化問題を一般質問で取り上げる議員は、ほんの数人だった。  
 しかし、本当に、地球温暖化問題は票に結びつかないのか?  
 以前、知り合いのある政治家は、初めての選挙で、票にならないといわれていた防災問題を政策の中心に据えていた。周りからは、「防災ではなく福祉や教育を語れ」とアドバイスされていたようだが、本人は防災問題に取り組むために議員を目指していたことから、そのスタンスを変えなかった。たまさか選挙直前に別の地域で震災が発生。防災問題が一躍話題になり、形勢は逆転。見事、県議会議員としての初陣を飾った。  
 同様に、今後、地球温暖化問題やカーボンニュートラル(1)は、地域の課題としての重要度を増してくる可能性は、皆さんが考えている以上に非常に高いと筆者はみている。
  なぜなら、国は地方に温室効果ガス排出量削減をやんわりと押しつけてきているからだ(2050年ゼロカーボンシティの表明の勧奨、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金など)。そして、これからその圧力はさらに強まることだろう。  
 国は、国際的に約束してしまった2030年の温室効果ガス排出量46%削減が難しいとなってくれば、地方公共団体に対して何らかの温室効果ガス排出量削減ノルマを課すことは想像に難くない。  
 また、企業などの誘致においても、カーボンニュートラルへの対応が遅れた区域は、これから不利になる時代もやってこよう。世界的に活動している大企業などは、環境問題への取組みの熱心さに応じて、投資格付けがなされている。投資家や消費者などから、企業立地先として、地球環境問題に熱心でないまちとみなされると、あなたのまちは企業、投資家、消費者から「選ばれない」まちになってしまう。  
 議員の皆さんも早く地球温暖化問題や他の地球環境問題を「自分ごと」としてとらえてほしい。と同時に、地球温暖化対策や生物多様性などの地球環境問題についてより深く理解いただき、積極的に議会の場等で質問することで、「地球温暖化問題なら、地球環境問題なら〇〇議員」と呼ばれるようになろう。幸い環境問題は全市的な取組みになることから、地域の縄張りも関係ないため、他議員への遠慮も無用である。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る