2022.01.28 政策研究
第22回 区域性(その2)
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
はじめに
前回(「区域性(その1)」)は、国定の「地方自治物語」に関して検討した。そこでは、区域は軽く、また、重いものであることを指摘したところである。すでに論じたとおり、「第1編 総則」には「区域」は登場しないのであり、その意味で軽い存在である。
まずは、憲法規定「地方自治」規定を受けているという意味で、また、国定の「地方自治物語」であることからも分かるように、「区域」よりも「地方」が重要である(傍点筆者、以下同様)。この点は、連載第10回から第14回まで「地方性」として論じたところである。
そして、「地方」に次いで「第1編 総則」に登場するのは、「地域」である。「区域」が軽いのであれば、「地域」が重いということができよう。そこで、今回は、「区域」とは異なる「地域」について考えてみよう。
地方・地域・区域
「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」(1条の2第1項)とされている。また、「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する」(2条2項)とされている。そして、「自治事務である場合においては、国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない」とされる(同条13項)。
「地方自治物語」の流れとしては、国と密接な関係において対置される「地方」が存在し、その団体(地方公共団体)は、しかしながら、「地方における行政」ではなく、「地域における行政」を担う。そして、団体かつ法人としての地方公共団体のうち、普通地方公共団体である都道府県・市町村は、「区域における事務」ではなく「地域における事務」を処理する、というわけである。もちろん、「その他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」も処理するので、「地域における事務」だけを処理するのではないが、中核の事務は「地域における事務」である。つまり、「地域における行政」を担う役割があるので、「地域における事務」を処理する、というわけである。その後で、「区域」の話に移っていく。