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2021.09.27 政策研究

第18回 中心性(その4)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

地動説的自治観の地の果て

 連載第15回「中心性(その1)」で触れたように、国を中心に据えて、自治体に周辺性を認めるのが、地動説的自治観である。この場合、国の周辺を都道府県が周回し、都道府県の周りを市区町村が周回する二段階軌道型と、国の周辺を都道府県・市区町村がそれぞれ周回する一段階軌道型がある。前者の場合、市区町村から見れば、都道府県には中心性が備わることになる。裏返していえば、市区町村の周辺性は、都道府県に対するものと国に対するものと、二重に存在する。二段階軌道型の方が、市区町村の周辺性は際立つであろう。
 地動説的自治観において、国や都道府県の関係の中では周辺性で彩られる市区町村であっても、天動説的自治観に立って、市区町村それ自体を中心に据えて描くことはできる。市区町村の意思決定の中心性を探れば、どこかに中心性は認められることが多い。天動説的自治観であれば、そうした市区町村の中心性を反映して、様々な人間・組織・団体とともに、都道府県・国も周辺に位置付けられるだけである。しかし、こうした人間・組織・団体は、事実として存在しているとしても、必ずしも制度的に明確に周辺に位置付けられるとは限らない。あくまで、事実上の内野・外野の主体群なのである。

住民という中心性/周辺性

 自治体において制度的に存在するのは、住民である。住民は、住民自治において、自治体為政者の意思決定に、選挙・世論などを通じて、最終的な民主的正統性を与える存在であるから、自治体の意思決定の中心性そのものといえよう。いわば、住民を中心とする地動説的自治観である(図1)。
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図1

 もっとも、現実には、「一にして不可分」の住民というのは存在しない。現実に存在する主体は、個々人としての住民たちでしかない。住民たちが一枚岩になるためには、個々の住民間での権力関係による統合が必要である。結局、住民たちの中で、より権力を持つ住民と、より権力を持たない住民とに、分化していくことになる(図2)。したがって、観念的または理念的に、あるいは規範的に、住民こそが自治体の中心であるとしても、実際にはそうはならない。むしろ、個々の大多数の住民は、意思決定の中心性を備えた自治体に対して、周辺性が割り当てられることが自然である。自治体を中心とし、住民を周辺とする天動説的自治観である(図3)。
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図2

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図3

 住民と自治体の関係における天動説的自治観を、国・都道府県・市区町村の関係に接合する場合にも、いろいろな整序の図柄が考えられる。天動説的自治観を貫徹すると、市区町村の周辺を住民・都道府県・国が周回することになる。この場合、市区町村の周辺を都道府県が周回し、その限りで、住民と都道府県が同じような位置付けになり、国は都道府県を周回し、市区町村に対して直接に周回しない遠い存在になることもある(図4)。あるいは、市区町村の周辺を、住民・都道府県・国が同じように周回することもある(図5)。
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図4

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図5

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