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2021.09.10 議員活動

第12回 信頼と議員

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

1 議会内における「争点化・議論」と「信頼」

 本連載の最終稿では、自治体議会(議員)の市民や他のアクターとの信頼関係について概観してみよう。
 社会は多くの人々で成り立っている。そして、人の価値観は様々である。置かれた立場によって見解が異なることもある。そのため、物事の決定には議論が必要となる。多様な市民の信託を受けた議員には、極力「謬(びゅう)(=間違い)」を避けるためにも議論が求められる。
 ときには、新型コロナウイルス対応のように、新しい課題が出現することもある。新型コロナウイルス対応では、休校、店舗休業(時間短縮)、イベント中止(入場制限)等について議論が分かれた。市民間ではもちろんのこと、府省間、自治体と府省、自治体政府間、議会と行政、政府と専門家、専門家間で議論が分かれた。また、新型コロナウイルスの特徴が見えてくるに従って、あるいは感染者数や入院者数・自宅療養者数等の増減によっても議論の方向性が変化している。
 議論は見解が分かれている事柄や議論の方向性が変化している事柄で争点化すると効果がある。議会内で争点化するには、議論するための議会内(議員間)での「信頼」が必要となる。もちろん、「信頼」には市民や他のアクターへの「公開」が前提となる。また、文章化することで、議論の内容を明確化(確定)することができるし、その場にいなかった人も後から内容を確認することができる。そして、その内容を踏まえて議論することができる。文章化すること(=公文書の作成・保存・公開)は、信頼の前提となる(図1参照)。
 なお、文章化すること(=公文書の作成・保存・公開)については、自治基本条例や議会基本条例に位置付け、詳細については個別の条例化を図る必要がある。
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出典:筆者作成
図1 議会内における「争点化・議論」と「信頼」

2 政策資源の一つとしての信頼

 では、争点化の前提・議論の前提としての信頼は、どのようにして高まるのであろうか。中邨章は、期待に対する結果が充足すると信頼が高まるという(中邨 2010:142)。一方、多くの国で国民が政治や行政に不信感を持つのは、政府や自治体の提供する成果が、有権者や納税者の期待を下回るからであるとし、これには二つの問題が関わっているとする。一つは、政治行政を批判しながら、実は政府や自治体に大きな期待を寄せるという矛盾した行動様式を示す市民が少なくないことであり、二つ目に、増幅を続ける市民の期待や要望に対応する政治や行政の能力に限りがあることであるという(中邨 2010:143)。
 このようなジレンマを超克するには、次の方策が考えられる。一つとして、政治行政を批判しながら実は政府や自治体に大きな期待を寄せるという矛盾した行動様式を示す市民を少なくすることである。二つとして、増幅を続ける市民の期待や要望に対応する政治や行政の能力を確保することである。これらの課題に対応するためには、「自治体政府以外の政策資源の増加」ないし「自治体政府の政策資源の増加」が必要となる。ここでいう「政策資源」には、人・財源・権限・情報、そして信頼が含まれる。
 もちろん、「増加すべき政策資源」が、「自治体政府以外の政策資源」なのか、「自治体政府の政策資源」なのか、その両方なのかは、「自治体政府以外のアクター」及び「自治体政府」の役割の変容(例えば、分権化)と文脈(例えば、それまでの実績)により求められる。ここでいう「自治体政府以外のアクター」とは、市民・団体・法人・他の自治体政府・国・国際機構などであり、「自治体政府」とは当該自治体政府をいう。

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