2021.06.10 議員活動
第9回 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」「政策変容」と議会
元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
1 「社会変容」「環境変容」「担い手変容」と「政策変容」
長期間にわたって続く政策は、「社会変容」「環境変容」に対応した是正・見直しがなければ、いつかは失敗する可能性が高まってしまう。松下圭一も「問題解決の手法」は歴史の中で変わっていくという(松下 1991:36)。歴史を「社会変容」「環境変容」という言葉に置き換えれば、「問題解決の手法は社会変容の中で変わっていく」「問題解決の手法は環境変容の中で変わっていく」ということになる。本稿では、日本において、どのような「社会変容」「環境変容」があり、どのような「担い手変容」を通して「政策変容」が行われてきたのかを確認するとともに、これからの「政策変容」のあり方について考えてみよう。もちろん、「政策変容」には、光だけでなく同時に影があることを忘れてはならない。
2 「都市型社会」と「政策の相互制御」
私たちの暮らす社会は「都市型社会」といわれる(松下 1991、土山 2007、土山 2018)。日本においては、それまでの自給自足を基本とする「農村型社会」から「都市型社会」に、1960年頃に移行し1980年代頃に成立したとされる(松下 1991:70)。今日の日本においては、例えば、電気・ガス・水道・下水道・ごみ処理施設などの供給処理施設なくしては、日々の暮らしは立ち行かない。私たちの生活は、このように〈政策・制度のネットワーク〉の存在を前提としている(土山 2018:91-92)。このことは、「都市型社会」の姿を示している。 そして、松下によれば、都市型社会への移行に伴い、シビル・ミニマムとしての社会保障、社会資本、社会保健の公共整備をめぐって、市民参加・自治体改革という問題状況が出現する。その結果、自治体には、①政策課題の拡大、②権限・財源の拡大、③職員の量・質の上昇、④政策立案・執行能力の熟達が起こり、政府として自立することになる(松下 1991:57)。さらに、松下は今日必要とされる計画について、(1)その内容を、絶えず市民・政党からの批判によって修正しうるような、「予測と調整」をめぐる柔らかい構造とし、(2)その課題・責任を、市民、団体・企業また自治体政府、国、国際機構の各レベルに分担させ、「相互制御」できるような柔らかいシクミをつくる必要があると論ずる(松下 1991:133)。