2021.03.25 議会改革
第18回 議員の懲罰等とそのあり方
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
1 自治体における議員の責任追及
議員は、議会の構成員として、その運営・活動に参加する権利と義務を有しており、また、議会における規律に従うことを求められる。その義務や規律に反する場合には、議会や住民によって、その責任を追及され、制裁が科されることもある。
そして、そのための手段として定められているのが、議会が議員に科す懲罰の制度であり、また、住民が議員の責任を問うものとして設けられているのが解職請求の制度である。政治倫理条例の整備状況次第ではあるが、政治倫理審査会に審査や調査を請求する途(みち)などもありうる。
このほか、法的効果を伴うものではないものの、議会において厳重注意や警告等の懲罰的措置、問責決議や辞職勧告決議などが行われることもある。
これらが適切に行われているのであれば、ここであえてあれこれ述べる必要はない。しかしながら、近年は、各地で懲罰や辞職勧告決議などをめぐる紛争が増加しており、中には、議会内におけるムラ的体質(排他的同調性等)が垣間見えるもの、多数派の横暴とも見られるものなど、適切に行使されているとは言い難いようなケースもある。あくまでも一部の議会の問題であり、また、外部からはなかなかうかがい知ることができない事情もあるとはいえ、様々な意見や異論があることを前提に議論・調整を行う場であるはずの議会において寛容さが薄れ、数の論理によって異論や批判、ないし少数派を抑圧・排除しようとする動きがあるとすれば、残念なことであり、ゆゆしき問題ともいえる。
議会については、議事機関としての自主的かつ円滑な運営・活動を確保するために自律権が認められているのであり、それは、多数の同意さえあれば何でも自由に行使できるものではなく、法の趣旨や規定の枠の中で適切に行使することが求められているものであることが改めて認識されるべきだろう。