2020.12.25 議員活動
第8回 住居を失った被災者を支援する仕組み
関東学院大学法学部地域創生学科教授 津軽石昭彦
第8回(第15講、第16講)のポイント
1 住居を失った被災者は、避難所⇒応急仮設住宅⇒災害公営住宅と、転々と住居を移らざる得ない状況となり、それぞれを早急に整備するとともに、快適に過ごすことができるような自治体の取組みが大切である。
2 災害公営住宅には、最終的に高齢者、障害者などが残ることが多く、多様なコミュニティ支援を必要とするほか、特例措置の終了に伴う住宅の家賃の増嵩(ぞうすう)などの課題もある。
3 被災者の自宅再建は、復興後の地域づくりにも関わる課題であり、公的支援の拡充も必要であるが、今後の災害発生も考えると支援の範囲についての考え方の整理も求められる。
第15講 住宅を確保する仕組み
大規模災害の発生後、住家を失った被災者にとっては、住む場所の確保が大問題となります。
ここでは、被災者の住む場所に着目して考えてみましょう。
1 被災者の住まいの変遷
住家を失った被災者は、生活の基本となる住む場所を、短期間に何度も移ることを余儀なくされます。すなわち、発災直後は、地域の公民館などの指定緊急避難場所(災害対策基本法49条の4)に一時的に難を逃れ、その後、当面の居住場所となる応急仮設住宅が確保されるまで、指定避難所(同法49条の7)で、いわゆる「避難所生活」を余儀なくされることとなります。指定避難所は、住家を失った場合の一時的な滞在であり、一定の人数を収容できる体育館等が指定されます。
その後、応急仮設住宅が確保されると、そちらに移ります。応急仮設住宅は、発災後原則20日以内に着工又は借り上げることとなっていますが、実際は、災害の規模が大きく、住家を失った被災者が多い場合、建設まで相当の時間がかかるケースもあります。また、応急仮設住宅の提供は原則2年間で、これも仮住まいということになります。阪神・淡路大震災や東日本大震災では、応急仮設住宅の建設に時間を要して被災者の入居まで数か月かかり、その後も数年以上の長期にわたり「仮設住宅暮らし」を強いられる場合も多くみられました。
その後、応急仮設住宅に居住した被災者は、自力での自宅の再建か、災害公営住宅又は民間賃貸住宅への移転を選択することとなります。
このように、住家を失った被災者は、数年の短い期間に住む場所を転々とせざるを得ない状況に陥り、様々な生活上の課題を抱えることが少なくありません。