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2020.06.10 議会運営

第71回 選挙管理委員の選挙

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

選挙管理委員の選挙

Q選挙管理委員の選挙を行ったが、当選人が3人しかいなかった場合、残りの1人を再選挙する際の日程の取扱いや選挙における法定得票数をどのように考えればよいのか。

A地方公共団体には地方自治法(以下「法」という)181条1項により選挙管理委員会を設置することが義務付けられ、さらに同条2項及び法182条1項並びに同条2項により選挙管理委員を4人、選挙管理委員補充員を4人、選挙することが義務付けられている。

【法181条】
① 普通地方公共団体に選挙管理委員会を置く。
② 選挙管理委員会は、4人の選挙管理委員を以てこれを組織する。

【法182条】
① 選挙管理委員は、選挙権を有する者で、人格が高潔で、政治及び選挙に関し公正な識見を有するもののうちから、普通地方公共団体の議会においてこれを選挙する。
② 議会は、前項の規定による選挙を行う場合においては、同時に、同項に規定する者のうちから委員と同数の補充員を選挙しなければならない。

 選挙管理委員及び同補充員の選挙も、地方自治法に定められた議会で行われる選挙であることから、法97条及び118条の手続に従うこととなり、選挙の方法は投票又は指名推選により決定することとなる。

【法97条】
① 普通地方公共団体の議会は、法律又はこれに基く政令によりその権限に属する選挙を行わなければならない。

【法118条】
① 法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第46条第1項及び第4項、第47条、第48条、第68条第1項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条の規定を準用する。その投票 の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。
② 議会は、議員中に異議がないときは、前項の選挙につき指名推選の方法を用いることができる。

  それゆえ、選挙管理委員及び同補充員は投票により選挙するに際しては、法118条1項で準用している公職選挙法(以下「公選法」という)95条1項3号が準用されるため、有効投票の総数を選挙管理委員及び同補充員の定数である4人で除して得た数の4分の1以上の法定得票数が必要となることから、有効投票のうちの16分の1以上の票を得た者のうちか ら上位4人がそれぞれ当選することとなる。

【公選法95条
① 衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者をもつて当選人とする。ただし、次の各号の区分による得票がなければならない。
3 地方公共団体の議会の議員の選挙当該選挙区内の議員の定数(選挙区がないときは、議員の定数)をもつて有効投票の総数を除して得た数の4分の1以上の得票

 また、選挙管理委員及び同補充員の選挙は行政実例昭和26.12.22のとおり、それぞれ一度の選挙で決める必要があり、個々の選挙管理委員等ごとに投票を行うことはできない。

◯選挙管理委員の選挙の方法(行政実例昭和26.12.22)
問 議会において選挙管理委員会委員4名を選挙する場合に、4名共1回の投票により決定すべきものと思うが、1名宛を4回に分ち選挙しても差し支えないか。
答 全員1回の投票により決定すべきものであり、ここに投票を行うことはできない。

 なお、選挙管理委員が欠員となったときは、法182条3項により選挙管理委員長が補充員の中から選ぶこととなるが、その順序は、①選挙の時が異なるときは選挙の前後、②選挙の時が同時であるときは得票数により、③選挙における得票数が同じであるときはくじにより、決めることとされている。

【法182条】
③ 委員中に欠員があるときは、選挙管理委員会の委員長は、補充員の中からこれを補欠する。その順序は、選挙の時が異なるときは選挙の前後により、選挙の時が同時であるときは得票数により、得票数が同じであるときはくじにより、これを定める。

 ちなみに選挙管理委員の選挙は、行政実例昭和24.10.24により任期満了日前に選挙することができるとされている。

◯選挙管理委員の選任と任期の起算(行政実例昭和24.10.24)
問 選挙管理委員会委員の選挙は、任期満了後執行すると解するも差支えないか。 なお、任期の起算は選挙の翌日と解するや否やも併せて御指示せられたい。
答 10月17日付照会のあった標記の件については、任期満了の日以後において執行するのが、原則であるが、議会招集の都合等により、任期満了日前に選挙しても差支えない。
 なお、委員の任期は、選挙の日から起算するものである。但し、前任者の任期満了日前に選挙を行った場合においては、前任者の任期満了の日の翌日から起算すべきである。

 さて、議会で選挙管理委員を4人選挙するに当たり、本問におけるように当選人が4人のうち3人しか出なかった場合や、4人の当選人が選ばれてもそのうちの1人が当選を承 諾しない場合、残りの1人をどのように選ぶかが問題となる。この場合には、4人のうち3人しか当選人が決まらなかったことから、残りの1人について再選挙を行うこととなる。この再選挙に当たっては、選挙管理委員4人を選挙する延長であることから改めて日程追加を図る必要はなく、再選挙を行えばよい。
 そして、残りの1人の再選挙における法定得票数は当初の選挙管理委員4人を選挙するときを基準とした法定得票数であることから、有効投票のうちの16分の1以上の票を得た 者のうち最多得票を得た者が当選人となる。
 なお、選挙管理委員の選挙は当該地方公共団体の住民全員を対象とすることから、当選人をどのように確定するか問題となるが、選挙管理委員の選挙では被選挙人の氏名と住所を記載して行えば当選人の確認に問題が生じない。それ以外の方法として、行政実例昭和 33.1.24のとおり事前に選挙管理委員の候補者を特定し、その中から選挙により選ぶことも可能である。

◯選挙管理委員の選挙とその決定等(行政実例昭和33.1.24)
問(事実)本市議会における選挙管理委員の選挙において出席議員43名により投票が行われ、投票点検中「今井市郎」と「今井一郎」と記載した票があったが、議長は立会議員の意見を聞いて別々に計算することに決定した結果 横山光明11票 井上忠11票 今井市郎9票 助川貞利9票 今井一郎2票 久保と記載のもの1票 となった。従って今井市郎と助川貞利が同数であったので抽せんの結果助川貞利が当選した。そこで議長は選挙管理委員に横山光明、井上忠、助川貞利がそれぞれ当選と決定した旨を宣告した。
 なお、翌日各委員から就任承諾書を受領した。
1 前述の事実において、「今井市郎」の得票に「今井一郎」の得票を算入しなかったことは投票の効力の認定に誤りがあったと認めるべきか。
2 選挙管理委員等の選挙の如く、候補者制を採らない選挙においては、いわゆる有権者中には「今井一郎」なる実在人物も考えられる(有権者に実在する) ことから「今井市郎」の得票に「今井一郎」の2票を算入しなかったことについてはどうか。
答1 議会が選挙を行う場合においてあらかじめ被選挙人の範囲を定めて選挙をすることを例としているときその他選挙当時の事情にかんがみ被選挙人の範囲が特定 されているときは、当該被選挙人に対する投票の誤記と認められる限り有効と解する。

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