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2020.05.25 政策研究

第2回 近接性(その1)

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

はじめに~「住民に身近」論~

 自治体、つまり都道府県と市区町村と、国との違いはいろいろあるが、「住民から身近」であることが挙げられることがある。しばしば、枕ことばとしても「住民に身近な」ということがいわれることがある。この特徴をここでは近接性と命名しよう。近接性は、国の行政と比較して、自治体行政の特徴である。しかしながら、いかなる意味で、自治体には近接性があるといえるのか、考えてみよう。

地理的距離

 近接・遠隔とは、まずもって地理的な距離として捉えることができる。ある個人と市区町村・都道府県・国との地理的距離の遠近を、どのように測定するのか、である。区域・空間として見れば、ある個人は、ある市区町村の区域に存在するとともに、都道府県の区域にも同時に存在し、さらに国の区域にも存在する。つまり、政府というものが、領域支配として区域・空間的に広がりを持つ限り、市区町村とも都道府県とも国とも、地理的距離はゼロで同じである。
 しかし、通常は、距離は点と点の間で測定する。ある個人は、地理的にはほぼ点と同一視することができる。問題は、領域支配を行い、区域を持つと考えられる自治体と国である。国も自治体も、点で代表するならば、「中心」を設定するしかないだろう。自治体と国の「中心」はどこであろうか。通常は、行政や議会の最高機関の所在地であろう。つまり、役場本庁や議会ということである。
 ある個人から見て、市区役所/町村役場・市区町村議会と都道府県庁・議会と首都機能(中央府省・国会)(1)との距離を計測すれば、多くの個人の場合、市区町村<都道府県<国である。国の方が自治体より地理的距離が近いのは、事実上、長時間残業で庁舎にあたかも住んでいるかのような生活をしている霞が関官僚とか、議員宿舎や近隣料亭・クラブなどに事実上居住している国会議員ぐらいであろう。もっとも、こうした本省官僚・国会議員であっても、住所地は霞が関・永田町ではないことが普通であろうから、自治体の方が地理的距離は近いだろう。
 物理的に計測される距離は、人間生活上ほとんど意味がなく、実際に重要なのは、移動時間であり、接近(アクセス)の容易性である。近接性というより、接近性の方が適切かもしれない。この場合も、多くは市町村の方が県より近く、県の方が国により近いのは自然かもしれない。なお、県内の周辺市町村の場合には、自県よりも他県の方が近いということはありうる。例えば、千葉県松戸市からは、千葉県庁へ行くよりは東京都庁へ行く方が、時間的には近いということはある。ちなみに、松戸市の場合は、東京都庁に行くより、さらに、中央府省・国会へ行く方が近い(2)

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