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2020.03.25 議会運営

第70回 議会選出監査委員

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

議会選出監査委員①

Q議会選出の監査委員である議員が、現副市長の任期満了に伴い、副市長として就任について長から打診があり就任する予定である場合、議員の辞職願を提出後、監査委員の辞職届はいつ提出すべきであるか。また、副市長の選任同意議案を議会が同意し、長が副市長に当該議員を任命すれば、議員を自動失職したものとなるのか。

A監査委員は地方自治法(以下「法」という)196条1項に基づき、長が議会の同意を得て識見を有する者及び議員のうちから選任するものとされている。その中で議会選出の監査委員はその任期が法197条により、議員の任期によるものとされており、一般的には4年の任期となる。

【法196条】
①  監査委員は、普通地方公共団体の長が、議会の同意を得て、人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者(議員である者を除く。以下この款において「識見を有する者」という。)及び議員のうちから、これを選任する。ただし、条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができる。

【法197条】
 監査委員の任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては4年とし、議員のうちから選任される者にあっては議員の任期による。ただし、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない。

 この議会選出の監査委員の任期を議員の任期とすることの意味するところは、議員としての身分を有している限り法197条の2に基づく長による罷免又は法198条に基づく監査委員自らによる退職願に対する長の承認がない限りその身分を失うことはない。

【法197条の2】
①  普通地方公共団体の長は、監査委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき、又は監査委員に職務上の義務違反その他監査委員たるに適しない非行があると認めるときは、議会の同意を得て、これを罷免することができる。

【法198条】
 監査委員は、退職しようとするときは、普通地方公共団体の長の承認を得なければならない。

 ここで、法126条により議員が開会中に議長に対し議員辞職願を提出し、本会議で当該願が可決されれば、特に確定日付のある辞職願でない限り、議会での議決の時から議員辞職の効果が発生する。そうなると、議会選出の監査委員はその任期が議員の任期によるとされていることから、何らの手続を要することなく、議会選出の監査委員の職も失う。そのため、議員辞職願を提出し、議会の許可を得た場合は、改めて監査委員の退職願を提出する必要はない。
 次に、議員は法92条2項により長の補助機関である副市長を兼職することが禁止されている。

【法92条】
② 普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び地方公務員法……第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員……と兼ねることができない。

 ところで、副市長は法162条により長が議会の同意を得た後に任命することにより就任することとなり、議会の同意は副市長就任に当たっての前提要件となる。

【法162条】
 副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任する。

 ここで、本問におけるように長が副市長選任同意議案を議会に提出し、議会が当該同意議案を可決して長が任命しても、その任命の効力は無効となる。なぜなら、副市長は先述したように議員との兼職禁止の規定が存在し、議員が副市長に就任するためには、行政実例昭和25.7.17のとおり議員を明示的に辞職しない限り兼職を禁止された職に就き得ないからである。
 ゆえに、議員を副市長とする同意議案が議会で可決され、長が任命したとしても、議員が自動失職するものではない。

〇市町村の図書館に勤務する職員と議会の議員との兼職(行政実例昭和25.7.17)
問  図書館法附則第1項及び第11項の規定により、「この法律施行の際、現に市町村の設置する図書館に勤務する職員で地方自治法施行の際官吏であった者は、別に辞令を発せられない限り、8月1日から、当該図書館を設置する市町村の職員に任命されたものとなる。」この場合その職員が当該市町村の議会の議員を兼ねているときは、そのいずれか1について7月末日までに退職の手続きをとるべきであると思うが、それをしないままで7月末日を経過したときは、
 1  議員か職員かいずれか1の職を失うものと解してよいか。失うものとすれば、そのいずれを失うものとなるか。
 2  法に抵触するが、いずれの職も失わないものであるか。
答  議員の職を辞さない限り、法令上市町村の職員に任用されることは不可能と解される。

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