可児市議会議員/ローカルマニフェスト推進連盟共同代表 川上文浩
予算を定めることは議会の使命
二元代表制の地方自治体においては、議会が合議制であるのに対し、首長は独任制であり、一人の首長が大きな権限を有している。独任制は意思決定が迅速である一方、民意の反映が困難といったことが挙げられる。
地方議会の使命として「条例を設け又は改廃すること」、「予算を定めること」、「決算を認定すること」などが議決事項とされているが、中でも地方自治法96条1項2号において規定されている「予算を定めること」については、首長の予算に関する権限「予算を調製し、及びこれを執行すること」に関してその形成、決定、執行について、議会としてどのように「監視と評価」をしていくのかが大きな役割であり、どのように決定したのか(決定のプロセス)を広く市民に公表することにより議会の説明責任を果たすことになる。
以前、筆者に近い住民の皆さんに「議会に期待していることは何ですか?」と聞いたことがある。それに対する回答の主なものは「権力により集められた税金の使い方が正しいか?」、「集められた税金がどのように使われているか? その効果は?」、「不正や無駄はないか?」、「市民の声は市政に反映されているか?」であった。市民福祉の向上に向けて、まずは議会として予算・決算審査を通して、より丁寧に、より深く議論をする「熟議型議会」の醸成のためにその機能を充実させる仕組みをつくることが必要となってくる。「熟議型議会」こそが、住民投票では代替できない議会の機能であると考えている。
サイクルに基づいて意思決定を進める
可児市議会では、決算認定に重点を置き、重点事業点検報告書や総合計画・総合戦略などを勘案して議員間自由討議を活発に行い、丁寧な審査を行っている。次年度予算について議会内で議論し一致した事項を提言としてとりまとめて、次年度予算へ反映させる仕組みをつくっている。もちろん、その際には議会報告会や各種団体との意見交換会、高校生議会など様々な広聴機能により集めた市民意見を予算に反映させることができる。
ここでは、予算に対して可児市議会がどのように審議を進めているかを紹介する。その前に、可児市議会で意思決定を行うために用いている四つの政策サイクルについて説明する。可児市議会では、これら四つのサイクルを集約したものを「民意を反映する政策タイムライン」として議会活動を充実させている。
① 1期4年のサイクル(議会運営サイクルとして引継ぎ事項を決定し、申し送りをしている)。
② 決算認定の際に課題を抽出し、それを次年度予算に反映させる予算決算審査サイクル。
③ 定例会ごとに、常任委員会と各種団体との懇談会、議会報告会などで出された市民意見や一般質問から抽出した課題を、各常任委員会の所管事務調査に追加し、委員会機能を充実させる政策サイクル。
④ 高校生議会やママさん議会、地域課題懇談会等で集約した若い世代の意見を反映する交流サイクル(議会、学校、NPO縁塾、行政、子育て世代・地域との協働)。
これら四つのサイクルそれぞれが、複雑に関係を構築している。このように、四つのサイクルを回しながら議会運営を行うことにより、市長提案の予算や条例案などについて議会が意見を申し添えることができ、市民意見が強く反映された議案へと変わっていくことになる。このような取組みによって、議決した案件すべてに議会・議員の説明責任を果たすという自覚が強まるとともに、住民への周知を図る方法としての「議会報告会」や 「各種団体との懇談会」、「様々な議会の広報活動」などの充実が図られている。このように、四つの政策サイクルの取組みにより「民意を反映する」議会活動を展開している。