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2019.08.27 政策研究

成年後見制度の現状及びその利用促進─中核機関の整備等─

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弁護士 菊永将浩

1 成年後見制度とは

(1)概要
 成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害等の精神上の障害により本人の判断能力が十分でない場合に、本人が不利益を被ることを防ぐために後見人等の本人を援助する人を就任させ、本人の権利や財産を保護する制度です。

(2)制度の基本理念
 成年後見制度は次の3つを基本理念として、2000年に開始されました。
・成年被後見人等の基本的人権と個人の尊厳が尊重されること
・成年被後見人等の自発的意思が尊重されること
・成年被後見人等の財産管理のみでなく身上の保護も適切に行われること

(3)成年後見制度の種類(1)
 成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。
① 法定後見制度
 「法定後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になってしまったときに、家庭裁判所に申立てをして後見人等を選任し、本人の権利や財産を保護し、本人を支援する制度です。
 法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの類型があります。
ア (法定)後見とは
 「後見」は、本人の判断能力が全くない場合の類型です。
 民法7条に「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる」と規定されています。
 「事理を弁識する能力」とは「判断能力」を意味し、「事理を弁識する能力を欠く常況にある」とは、例えば寝たきりになってしまっているなど、判断能力がないのが通常となっている状態を指します。
 この場合には、本人等の家庭裁判所への申立てにより成年後見人が選任されます。そして、本人は成年被後見人と呼ばれる立場になります。
 成年後見人は、本人(成年被後見人)に代理して契約など法律行為をすることができ、また本人が行った法律行為を取り消すことができます。
イ 保佐とは
 「保佐」は、本人の判断能力が著しく不十分な場合の類型です。
 民法11条本文には「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる」と規定されています。
 「事理を弁識する能力が著しく不十分」とは、後見の場合に比べれば判断能力はありますが、家の売買など重要な契約のときの判断に他の人の支援を必要とする状態を指します。
 本人等の家庭裁判所への申立てにより保佐人が選任され、本人は被保佐人となります。
 法律で定められた特定の行為を本人が行うにあたり保佐人の同意を必要としたり、申立てにより保佐人に特定の行為についての代理権等を与えたりして、本人を保護する制度です(前述の後見に比べると、本人の意思が尊重される仕組みとなっています)。
ウ 補助とは
 「補助」は、本人の判断能力が不十分な場合の類型です。
 民法15条1項本文には「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる」と規定されています。判断能力の低下の程度が、後見、保佐に比べて最も軽い程度の場合の類型です。
 本人等から家庭裁判所への申立てにより補助人が選任されます。そして、本人は被補助人と呼ばれる立場になります。なお、本人以外が申し立てる場合には、本人の同意が必要とされています。
 申立てにより、補助人の同意を必要とする行為や、補助人に代理権を与える行為を個別に決めていきます。
② 任意後見制度
 「任意後見制度」とは、任意後見契約に関する法律に根拠を持つ制度で、将来判断能力が不十分になったときに備えて、本人の判断能力が十分なうちにあらかじめ任意後見人を選び、本人の判断能力が低下したときの生活や財産管理についての事務を行ってもらうよう公正証書により契約を結んでおくものです。
 本人の判断能力が低下したときに、裁判所が任意後見監督人という立場の人を選任することで契約の効力が発動し、任意後見が開始します。

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