地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2019.01.28 議会運営

第63回 委員会提出議案の提出者名

LINEで送る

明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

委員会提出議案の提出者名

QA市議会では、平成18年の地方自治法(以下「法」という)改正を受け、会議規則に「委員会が議案を提出しようとするときは……、委員長が議長に提出しなければならない」と定めた。それ以降、請願の採択に伴う意見書案の発議は、委員会提出議案として請願を審査した委員会の委員長名で行うことと申合せをしている。
 先般、意見書提出を求める請願の委員会審査において、賛否が分かれ、委員長が所属する会派は継続審査を求めたものの否決され、採決の結果、請願は賛成多数で採択された。そのため、意見書提出に賛同できない会派に所属する委員長名で意見書案を提出することとなった。
 そして、本会議で、委員長は、意見書案の提出者としての説明は行ったものの、採決の際には、所属する会派の議員とともに退席し、採決には参加しなかった。
 このため、他会派の議員から、意見書提出に賛同できない委員長が提出者になるのは疑義があり、今回のようなケースでは、委員会提出議案としてではなく、委員会において賛成した議員による議員提出議案として意見書案を発議すべきではないかとの意見があった。どのように取り扱うべきか。

A地方議会の議案提出権は平成18年の法改正により、それまでの法112条に基づく議員定数の12分の1以上の発議による団体意思決定議案の提案権と、標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)14条に基づく○人以上の賛成者とともに連署して提出する機関意思決定議案の提案権の2種類から、法109条6項に基づく委員会による団体意思決定議案の提案権と市会議規則14条2項に基づく委員会による機関意思決定議案の提案権の2つが追加された。

【法109条】
⑥  委員会は、議会の議決すべき事件のうちその部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関するものにつき、議会に議案を提出することができる。ただし、予算については、この限りでない。

【市会議規則14条】
①  議員が議案を提出しようとするときは、その案をそなえ、理由を付け、法第112条第2項の規定によるものについては所定の賛成者とともに連署し、その他のものについては○人以上の賛成者とともに連署して、議長に提出しなければならない。
②  委員会が議案を提出しようとするときは、その案をそなえ、理由を付け、委員長が議長に提出しなければならない。

 これにより委員会も団体意思決定議案、機関意思決定議案のどちらにおいても議案を提案することが可能となり、その際の議案の提案者名は市会議規則14条2項のとおり委員会を代表する委員長名で提案することとなっている。
 なお、委員会が議案を提出するに当たっては、当該議案の内容すべてを所管する委員会だけでなく、他の委員会に所管がまたがる議案であっても、議案を提案しようとする委員会が所管の一部を有していれば、議案を提出することは可能である。
 さて、本問において委員会が意見書の提出を求める請願を採択した場合、意見書を委員会が提出しなければいけない法的な義務は特にない。しかし、委員会が意見書の提出を求める請願を採択すると、採択した道義的責任を勘案し、委員会で委員長又は委員発議により意見書案を提出、委員会で議決し、委員会提出議案として議長に提出することを申し合わせている議会は存在する。
 ここで本問のように意見書提出を求める請願を採択した委員会の委員長が、意見書を提出することに対し、反対の立場の場合、申合せに反し意見書を提出しない場合がある。ただ、委員長が意見書を提出しないと、委員長に事故ありとして副委員長が委員会において議決された委員会提出議案の提出者となり、議長に副委員長名で意見書案を提案することが可能である。この場合、委員会提出議案を提出しなかった委員長は、委員長としての職務を放棄したことから、必要に応じ懲罰の対象になりうる。
 本問では、委員長は意見書提出に反対であったが、委員会を代表する委員会提出議案の提出者として意見書を議長に提出している。
 次に、委員会提出議案として議長に意見書を提出した委員長の職務は、本会議において当該意見書の提出者として提案理由の説明を述べ、当該議案に対する議員の質疑に答弁することとなる。これ以降は、委員長といえども本会議においては議員の立場において自由に議案に対する意見や表決を述べることが可能となる。
 そのため、理論的には委員長の立場としての職務を本会議において終了すれば、議員の立場として意見を述べたり、行動することは法的に何ら問題とならない。
 本問において、所属する会派の他の議員とともに、委員長として自らが提案者となった意見書案の表決時点で退席することは何ら法的に問題とならず、責められるべきものではない。
 法的に問題とならないにもかかわらず本問において問題となるのは、一般的に、議案の提出者又は賛成者は、議案に賛成の立場であることが求められていることから、提出者又は賛成者が議案に反対の立場を表明することはあり得ないとの考えがあるからである。
 本問では、議案の提出者である委員長が、自らが提出した議案に反対の立場を表明したため、一般的な議案の提出者の考えに反するとし問題となったといえる。そのため、今後このようなことが起こらないようにするためには、国会における先例のように、委員会提出議案を発議する場合は議案の提出に対して、議員又は委員から反対者がいない場合に限定して行うことが重要である。
 つまり、本問におけるように、委員会において委員会提出議案を出すことに委員長を含めて反対の委員がいる場合には、委員会提出議案として提出するのではなく、賛成する委員が議員名で、団体意思決定議案については法112条の規定に基づき議員定数の12分の1以上の賛成をもって議員発議により、機関意思決定議案については市会議規則14条の規定に基づく議員発議により提案する申合せを設けることである。
 これによって委員長が反対の立場を表明する場合には、議案の提出者となることはなくなり、問題も解消され、妥当な取扱いとなろう。

 

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る