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2014.05.12 議会運営

第35回 発言禁止の効力

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発言禁止の効力

Q議員が質問に当たり事前に通告していた範囲外の発言を繰り返したため、議長が当該議員に対し発言禁止を命じた。しかし、その日に当該議員が議案に対する質疑を通告していたため、議長は特に発言禁止を解除する発言をすることなく、議案に対する質疑を行わせたが問題ないか。

A議会は言論の府であり、その構成員である議員には議会において何者にも拘束されず自由に発言できる発言自由の原則が保障されている。
 ここで、国会議員は憲法51条で国会における言論については民事・刑事の両方の責任を問われないとする免責特権が認められているが、地方議員には最大判昭和42年5月24日及び行政実例昭和23年6月16日のとおり、国会議員に認められた免責特権は認められないため、議会において議員が行った発言について、民事・刑事の責任を問われることはあり得る。

【憲法51条】
 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

○最大判昭和42年5月24日(刑集21巻4号505頁)
(要旨) 憲法上、国権の最高機関たる国会について、広範な議院自律権を認め、ことに、議員の発言について、憲法51条に、いわゆる免責特権を与えているからといって、その理をそのまま直ちに地方議会にあてはめ、地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない。もっとも、地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許されるべきことは、当裁判所の判例(昭和30年オ第430号同35年3月9日大法廷判決、民集14巻3号355頁参照)の示すとおりである。

 次に、先に述べたとおり地方議員には発言自由の原則が認められているが、議会において能率的及び秩序ある会議運営を図り、各議員に平等に発言させるために議員の発言に対して、一定の制約が法律上規定されている。
 すなわち、地方自治法(以下「法」という)132条及び標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)151条で議員の発言に対する制約の規定があり、法132条において議員は本会議又は委員会において無礼の言葉を使用し他人のプライバシーにわたる言論をしてはならないと規定され、また、市会議規則151条で議員は議会の品位を重んじなければならないと規定されている。

【法132条】
 普通地方公共団体の議会の会議又は委員会においては、議員は、無礼の言葉を使用し、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。

【市会議規則151条】(品位の尊重)
 議員は、議会の品位を重んじなければならない。

 これは住民の代表として選挙により選ばれた議員が住民の範たることを求められているにもかかわらず、無礼の言葉を使用したり、他人のプライバシーに関わる言論をすることは議会権威や議員の資質をおとしめることにつながり、それがひいては住民の議会不信や議員不信につながるおそれがあることからあえて規定したものであるといえる。ちなみに無礼の言葉とは、札幌高裁昭和25年12月25日判示のとおり議員が会議に付議された事項について自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員その他の関係者の正常な感情を反発する言葉をいう。

◯札幌高裁昭和25年12月25日(高裁民集3巻3号209頁)
(要旨) 地方自治法第132条にいう「無礼の言葉」とは、議員が会議に付議された事項について自己の意見や批判の発表に必要な限度を超えて議員その他の関係者の正常な感情を反撥する言葉をいい、このような意見や批判の発言である限り、たとえその措辞が痛烈であったがために他の議員等の正常な感情を反撥しても、「無礼の言葉」を用いたものと解することはできない。

 ところで議長には法129条に基づき、発言の禁止、議場の外への退去を秩序維持権に基づき命ずることができる旨の規定がある。

【法129条】
 普通地方公共団体の議会の会議中この法律又は会議規則に違反しその他議場の秩序を乱す議員があるときは、議長は、これを制止し、又は発言を取り消させ、その命令に従わないときは、その日の会議が終るまで発言を禁止し、又は議場の外に退去させることができる。

 議長の発言の禁止等を含む議事整理権が行使できるものとしては大きく6つに分かれる。すなわち、①議会の会議中、地方自治法又は市会議規則に違反し、その他議場の秩序を乱す場合、②議長に許可された発言の範囲を超える場合、③議題外にわたる発言の場合、④緊急質問において緊急性を欠く質問であると議長が判断した場合、⑤議事進行発言であるにもかかわらず議題に直接関係がなく又は直ちに処理する必要がないと認められる場合、⑥市会議規則57条により発言時間の制限をしたにもかかわらずその時間を超えた場合が該当するといえる。
 ここで、議長が発言の禁止をするに当たっては、いきなり発言の禁止を命ずるのではなく、禁止発言をする前に発言の注意をすることが適当である。ただし、会議の状況により例えば議場が騒然となる場合には、発言の注意をすることなく直ちに発言の禁止命令を出すことも可能である。
 次に、発言の禁止命令の期間であるが、議会は日をもって単位としていることから、法129条に基づきなされた議長の発言の禁止又は議場の外への退去の効力は、その日の会議が終了されるまでとなる。つまり最長でその日の午後12時までである。それゆえ、次の日の当該議員の発言の禁止を命令することはできないことに注意が必要である。なお、発言の禁止において議長は通常いつまでかを明示して禁止を宣告することとなり、一般的には市議会議事次第書54にあるとおり、本日の会議が終わるまでとしている。ただし、これ以外の方法としては、①議題となった案件の審議が終了するまで、②休憩になるまで、③○時までとすることが可能である。
 また、一度議長が発言の禁止等を行っても、議長がその必要性がないと判断した場合、いつでも発言の禁止命令の効力を解除することができ、その旨を議長が宣告する必要がある。
 本問は議長が発言の禁止を特に期限を定めず命じた後に、発言の禁止を命じられた議員がその日に質疑を行うことを特に発言の禁止命令の解除を宣告することなく行った事案である。発言禁止の解除は原則として議長の発言禁止解除の宣告により行う。ただし例外として、発言禁止命令を受けた議員に質疑させたということは、議長において黙示の発言禁止の解除をなしたと解され、このような運用も可能であると解する。当日の傍聴人と後日会議録を見る住民との関係から発言禁止命令の期間を明示し、その期間内における発言禁止の解除であれば、議長による発言禁止命令の解除宣告を行う方法をとるのが適当であると解する。

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