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2018.08.10 議会改革

【セミナーレポート】日本を変えるのは地方議会!1,100名が参加した「全国地方議会サミット」

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地方を変えるパイオニアとして

 全国の地方議員1,100名が参加する「全国地方議会サミット(以下、サミット)」が、2018年7月11日(水)、12日(木)の2日間、早稲田大学大隈講堂にて開催されました。主催はローカル・マニフェスト推進地方議員連盟、マニフェスト大賞実行委員会。これまでマニフェスト選挙、自治体間の善政競争を掲げて活動してきた両機関としても、1,000名を超える今回のサミットはこれまでにない参加規模で、両日とも大隈講堂は熱気に包まれました。
 サミットのテーマは「地方議会から日本を変える」。少子高齢化や財政難など、課題が山積する自治体、ひいては地方の課題を、議決権という強い権限を有する地方議会こそが解決していこうという強いメッセージが込められています。
 1日目は、まず「地方議会から日本を変える」と題して北川正恭早稲田大学名誉教授による基調講演がありました。北川名誉教授は「地方分権から地方創生へと進化させていく中で、これからはこの国を地方から変えていこう、議会から変えていこうということを考える二日間にしてほしい」と語りました。「執行部はどうしても法律や規則、条例に忠実になることを要請されるが、住民代表である地方議会こそは現行の制度をも変えていくことができるはずであり、地方を変えるパイオニア的存在となってほしい」としました。

地方議会から地方を変えようと力強いメッセージを語る北川名誉教授「地方議会から日本を変えよう」と力強いメッセージを語る北川名誉教授 また、「インタラクティブに情報が飛び交う現代にあって、何か隠そうと思っても隠せない時代となっている」として、90年代に問題となった官官接待など、政治と行政の癒着・汚職を超えて、真に地方の課題を解決するために、「オープン、フェアー、そしてクリーンな行政体こそが求められており、いまやオープンになることでしか説明責任は果たせない」と会場に提言をしました。そして、「政治のスタートは選挙であり、選挙のスタートがマニフェストである」として、来年の統一地方選挙への期待を語りました。

第32次地方制度調査会へとバトンが渡された「自治体戦略2040構想」報告書

 次に、特別講演として安田充総務省事務次官による「地方創生の展望」と題した講演がありました。冒頭、「町村議会のあり方に関する研究会」に関する言及がありました。同研究会については高知県大川村のなり手不足の提起に端を発して始まった研究会の報告書が3月に総務省より出されたところですが、全国市議会議長会や町村議会議長会など関係団体から地方軽視、地方自治を損うものとして強い反発がおきているところです。安田事務次官は、そういった意見は承知しているとしたうえで、「将来人口が全国的に減少していく中で、現在の議会のあり方が金科玉条とは考えておらず、引き続き関係者の意見を聴取しつつ、地方制度調査会の中で継続して考えていきたい」と話しました。
 安田事務次官の講演の主なテーマは、直近に第2次報告書が出された「自治体戦略2040構想研究会」でした。報告書によれば、自治体戦略2040構想は「2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機を明らかにし、共通認識とした上で、危機を乗り越えるために必要となる新たな施策(アプリケーション)の開発とその施策の機能を最大限発揮できるようにするための自治体行政(OS)の書き換えを構想するもの」とされています。報告書では、高齢者人口がピークを迎える2040年頃までの個別分野と自治体行政の課題について俯瞰し、2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機とその対応を、①若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏、②標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全、③スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラの3つの柱で整理されており、これらの危機を乗り越えるべく、全ての府省が政策資源を最大限投入するに当たって、自治体も、持続可能な形で住民サービスを提供し続けられるようなプラットフォームであり続けなければならないとしており、現在の地方制度の枠組みの変革に意欲を示したものと言えます。
 2018年7月5日よりスタートした第32次地方制度調査会においては、上記報告書等を踏まえつつ、「人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎える2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応する観点から、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスその他の必要な地方行政体制のあり方について」(諮問案より抜粋)、今後2年をかけて議論されていく予定であり、その展開に注視していく必要があると言えそうです。
 
 続いて、「真の地方創生とは何か」として片山善博早稲田大学教授と大西一史熊本市長それぞれの講演、そして北川名誉教授を交えてのディスカッションがありました。

小さな変革を積み重ねることが大事

 まず、片山教授が「地方創生と地方議会の役割」というテーマで講演を行いました。冒頭、「首長という立場で地方を変えたいと取り組んできたが、肝心なのは地方議会だと常に思っていた。実感として変わってきたと思っている」と話しました。更に、地方議会の今後の改革については「『変える』というと、何か目覚ましいことをやらなければと思いがちだが、そうではなく、積小為大、つまり、小さな変革を積み重ねることが大事であり、日常的に取組みを続けることが大事である」と語りました。
「積小為大、小さな変革を積み重ねることが大事」と説く片山教授「積小為大、小さな変革を積み重ねることが大事」と説く片山教授 
 このほか、鳥取県知事時代、日常的には議会と執行部が切磋琢磨しつつも、災害が起きたときなどには県が災害対応に専念できるよう議会が協力をしてくれたエピソードや、地方創生における地方議会の役割として、「国からの政策というのは、地域の視点で見るとピントがずれているということがままあるが、地方はプレミアム商品券に象徴されるように、国から言われるまま実施してしまうことが多く、現状は国の施策への対抗軸がない状態である。地方議会の議論は、地域本位でもっと地域のことを主張して良いのではないか。執行部は国とのしがらみもあるが、逆に議会はその点意見しやすい。もっと地域のことを主張して地域本位に考えてほしい」とエールを送りました。

自治体の災害対応と議会

 続いて、大西熊本市長による講演がありました。大西市長は2016年4月に発生した熊本地震の際に市長を務めており、その時の経験から「復興と議会」について語りました。災害の規模や範囲、避難者数等、様々な事項において自治体の想定を超えており、発災当初は「住民の生命と財産を守ると宣言して当選したのにもかかわらず、74万市民に対して水を届けることも難しかった。」と当時を振り返りました。

災害の規模や範囲、避難者数等、様々な事項でおいて自治体の想定を超えていたと熊本地震を振り返る大西市長災害の規模や範囲、避難者数等、様々な事項で自治体の想定を超えていたと熊本地震を振り返る大西市長
 災害時は、不安や混乱から、被害状況や避難所などについてデマ情報がインターネット等で出回りがちですが、大西市長は自らTwitterを活用して、熊本市からの公式情報を時々刻々と当時発信し続けたことで、各所から賞賛されています。このことに対し、「正確な情報を届けたいという想いでやったことだが、万が一間違った情報を自治体という立場で発信する場合が全くないとは言えず、情報の選択は重要」と語りました。
発災当初から大西市長自らTwitterを活用して、熊本市公式情報を時々刻々と発信し続けた発災当初から大西市長自らTwitterを活用して、熊本市公式情報を時々刻々と発信し続けた
 熊本市では震災の経験を踏まえて熊本市議会災害対策会議設置要綱を制定しましたが、これは、市議会議員からあがってくる避難者や市民の情報提供を市の災害対策本部へ一元化することが狙いとのことでした。
 その後、北川教授、片山教授、大西市長3名によるトークセッションがありました。片山教授は、「非常時の対応を考えることが、ひいては平時の議会改革に繋がる」と指摘しました。大西市長も「現在は定例会と定例会の間で断絶していることもあり、執行部と議会が平時でのコミュニケーションを密にとることも大事」と語りました。更に、災害発生時という特別の状態において、議会を通常どおり開くべきであるか、という論点については、大西市長は「災害時には、とにかく意思決定を短期間で行うことが重要であり、通常よりも手続を簡略化することも検討してはいいのではないか」とする一方で、片山教授は「専決処分の濫用には否定的。ごく限られた特別の場合だけにするべきであると考える。特に前例となりうるような、後々の行政に影響を与えるような予算などについては議会を招集するべき」と主張しました。これに対し、大西市長は「熊本地震の際も専決処分を行った。平時の時から、この程度であれば専決で行うなどと、議会と執行部があらかじめ協議をしておけると良いのではないか」と経験を踏まえて語りました。最後に北川名誉教授が「与党野党ということでなく、議案ごとに是々非々の姿勢で挑むことが大事」と指摘しました。

「与党野党」ということでなく、議案ごとに是々非々の姿勢で挑むことが大事

「与党野党」ということでなく、議案ごとに是々非々の姿勢で挑むことが大事

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