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行財政改革が進まない

 多くの場合は、役所の中で行財政改革を担当する部門から「見直し事業リスト」みたいなものが示され、そのリストに載った事業を担当する現場が「効果検証」や「必要性吟味」の検討を行い、「見直す」、「ここまで見直す」、「見直せない」と現場から行財政改革担当部門に回答し、そのやりとりを役所の中で上まで上げていくという段取りです。
 このプロセスを役所内部だけで行ったり、あるいは事業仕分けのように第三者を交えた外部評価機関で行ったりしているのですが、皆さん、このやり方、うまくいくと思いますか?
 ある事業の見直しを検討する場合、現場は必ずその事業がこれまで必要だったことを論証します。
 確かに事業として始まっていますから、その時点で必要性があると判断していたわけですし、それが今まで続いているということも、その事業が必要とされていることの証しでしょう。
 必要性が全くないことはないわけで、必要性が薄い、効果が薄いことというのはあるのでしょうが、そう簡単には論証できず、全くゼロではないことからその事業の便益を享受している市民からは事業継続を嘆願する声が上がり、役所内部での議論はもちろん、外部機関からの提言をもとにした見直しでも、市民や議会からの抵抗で頓挫してしまう、非常に難しい現状があります。
 この壁が乗り越えられなくて、行財政改革がなかなか進まないと感じている自治体関係者は多いのではないでしょうか。

何を削るかではなく何を残すか

 実は、先ほど紹介した事業見直しのプロセスには重要な視点が抜けています。
 それは、「何を削るか」という議論に終始してしまい、「何をどう残すか」が論じられていないということです。
 行財政改革で事業を見直すこと、やめることは、それ自体が目的ではありません。
 事業の見直しは、その事業を見直すことで財源を浮かせて収入と支出の均衡を図り、将来にわたって安定した住民サービスを提供できる持続可能な自治体運営をしていくために行う手法にすぎません。
 自治体として必ずやらなければいけない事業を残し、住民が求めるサービスのうち優先順位の高いものを維持し続けるために、残したい事業、残さなければならない予算に比べて優先順位の低いものを削っていく議論、すなわち「何をどう残すか」という命題に対して、役所も市民も議会も真摯に向き合うことが必要なのです。
 私が出張財政出前講座で提供しているプログラム、自治体経営シミュレーションゲーム「SIMULATIONふくおか2035」では、限られた財源の中で新たな政策選択をするために、あらかじめ与えられた既存事業を廃止して新規事業の財源を捻出してもらうというワークをやってもらっています。
 新規事業をやるかやらないか、やるとしたらどの既存事業を廃止するか、グループごとに侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をしてもらうのですが、ゲームが終わった後で私は皆さんに問いかけます。
 「手元に残った事業カードを見てください。いいまちになりましたか?」
 ゲーム参加者は、その時点で初めて手元の事業カードの全容を眺めます。
 それまで、何を削るかに終始していた彼らは、何のカードが残っているかの全体像をこのときに初めて知ることになります。
 そして、私は畳みかけるようにこういいます。
 「残ったカードが示しているのが、あなたのまちの将来像です。あなたは、最初からこの将来像を目指していましたか?」

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