2025.12.10 New! ICT活用・DX
第4回 議員広報とAI
AI活用の注意点
最後に、広報でAIを使う際に必ず押さえておきたいポイントを整理します。便利さばかりが注目されますが、議員としての信頼や責任に関わる部分だからこそ、しっかりポイントを押さえておきましょう。
(1)AIは「正確さ」ではなく「整理力」が強み
AIは、情報を素早く整理し、文章の構造を整える作業を非常に得意としています。思考がまとまらないときでも、要点を抜き出して流れをつくり、文章の形に仕立ててくれる点は、広報において大きな力になります。しかし一方で、AIが提示する事実関係や数値は必ずしも精度が高いわけではなく、文脈に合わない説明が混ざることも少なくありません。
地方議会の広報では、住民生活に直結する情報を扱うことが多いため、内容の正確性が極めて重要です。そのため、AIが生成した文章をそのまま「正しい情報」として扱うのではなく、あくまで整理の補助として活用し、数字・制度名・引用などは必ず自分自身で確認した上で最終版に仕上げることが欠かせません。
(2)住民情報や未公開情報は絶対に入力しない
AIを活用する際に最も注意すべき点は、個人情報や行政内部の未公開資料を入力しないことです。どれほど便利な道具であっても、外部のサービスに情報を送信する以上、完全に安全とは言い切れません。もし住民の相談内容や内部資料が誤って外部に流出すれば、住民の信頼を損なうだけでなく、議会や行政にも大きな影響を与えかねません。
広報づくりにAIを使う場合は、公表済みのデータや、もともと公開しても差し支えない内容に限定することが基本です。例えば議会報告やSNS投稿の草案づくりなど、外部に出ることを前提とした作業であれば安心して利用できます。一方で、住民相談の詳細やまだ発表されていない行政施策などは、絶対に入力しないという姿勢が、議員としての責任を守る上で欠かせません。
(3)校正・ファクトチェックは必ず自分で行う
AIがつくった文章は読みやすく整っていても、その内容が事実と完全に一致しているとは限りません。特に政策や行政情報に関する広報では、数字や固有名詞、制度の名称や仕組みなど、少しの誤りが大きな誤解を招く可能性があります。したがって、AIが生成した文章は「そのまま使える完成品」ではなく、「人間が必ず点検すべき素材」であるという前提を持つことが不可欠です。
ファクトチェックでは、特に行政データや法制度の説明、町の状況に関する記述について、一次情報に戻って正しいかどうかを必ず確認します。
このひと手間を怠ると、住民への誤情報発信につながり、議会や行政への信頼を損なう可能性があります。AIは「整理の達人」ではありますが、「正確さの保証人」ではありません。最後の安全確認と責任は、議員自身が担うべきものです。
AIで広報活動を効率化していきましょう
AIを広報活動に取り入れることは、単なる作業の効率化にとどまりません。まず、議員が日々直面する「文章をつくる」という負担を大きく軽減してくれます。議会報告やSNS投稿、地域へのお知らせ文など、地方議員は想像以上に文章業務が多く、一つひとつに丁寧な時間を確保しづらいのが現実です。AIが下書きや構成案、言い回しの調整を短時間で担ってくれることで、効率的な広報が実現します。
また、AIは文章の危険なポイントを事前に示してくれるため、不用意な表現による誤解や炎上リスクを減らせます。こうしたサポートによって、広報の質を保ちながら作業時間を短縮し、議員が本来注力すべき住民対応や政策立案により多くの時間を振り向けられるようになるでしょう。
次回は「データ分析と政策立案」をテーマに、AIをどのように政策づくりの武器として活用できるかを解説します。地域課題の把握、根拠資料の整理、政策案のたたき台作成など、議会での説得力を高めるための具体的な使い方を紹介します。次回の「地方議員の仕事がはかどるAI活用法」も、ぜひご覧ください。
