AIが広報活動を変える三つのポイント

　まずは、AIを活用することで、どのように業務を効率化できるかを紹介していきます。

（1）文章作成のスピードが大幅に向上する
　地方議員の仕事の中で負担が大きいのが、広報のための文章づくりです。議会報告、SNS投稿、地域への配布資料、公民館や自治会への案内文、議会だよりの原稿など、日常的に数多くの文章を作成する必要があります。それぞれ内容や目的が異なるため、毎回一定の品質を保ちながら短時間で仕上げるのは大きな労力を伴います。
　特に、文章の構成を考えたり、伝えたい内容を整理したりする段階は、多くの議員にとって時間がかかる部分です。書きたいことはあるのに形にできない、何から書き始めればよいのか分からないという悩みは、ほとんどの議員に共通しています。
　そこで役に立つのが、ChatGPTです。AIは文章の土台づくりを得意としており、議員が作業にとりかかるまでの「最初のハードル」を取り除いてくれます。例えば、伝えたい内容を箇条書きで伝えるだけで自然な文章に仕上げてくれたり、行政文書や議会資料を短時間で要約してくれたりします。また、SNS投稿や活動報告に適した文章も提案してくれます。
　これらの作業は数十秒で完了するため、広報にかかる時間を大幅に短縮できます。文章の仕上げは議員自身が行う必要がありますが、最初から全てを自力で書くよりも、AIがつくった土台に地域の事情や自身の思いを重ねていく方が、はるかに効率的です。
　ゼロから文章を組み立てる負担が軽くなることで、広報に対する心理的なハードルも下がり、継続的な情報発信がしやすくなります。議員の仕事の中で見落とされがちな広報作業が、AIの活用により、確実にやりやすくなるでしょう。

（2）「炎上」するリスクを減らす
　地方議会の広報で最も気をつけたいのが、意図せず誤解を招く表現や、読み手によって強く反発されてしまう可能性がある表現です。特に近年は、議員の発言がインターネット上で「炎上（＝大きな批判を招く）」するケースが後を断ちません。
　自分では「問題ない」と思っていた表現が社会的に大きな批判を招き、議会内での懲罰や辞職勧告決議に及ぶ可能性もあります。その一方で、炎上を恐れて情報発信を止めてしまうと、自分自身の活動を有権者に届けることができません。このように、文章がどのように受け止められるかを事前に把握することは、本来とても難しい作業です。
　ChatGPTは、この「読み手の反応を先回りして確認する」という作業を代わりに行ってくれる存在として非常に役立ちます。文章を入力すると、どの表現が誤解を招きやすいか、どの部分で否定的に受け取られる可能性があるか、あるいは読み手がどのように感じるかを、第三者の視点で示してくれます。
　特にSNSは、文章が短く情報量が少ないため、受け取り方の差が大きくなりがちです。AIで事前にチェックしておくことで、炎上など想定外の反応が起こるリスクを抑えることが可能です。

（3）用途に応じた文章の書き分けが楽になる
　地方議会の広報では、同じ内容を複数の媒体や相手に合わせて書き分ける必要がある場面が非常に多くあります。例えば、高齢者向けの紙媒体では専門用語を避けた分かりやすい説明が求められますし、SNSでは読み手の興味を引く短く軽い文章が必要になります。自治会長への報告文は丁寧な文体が適しており、議会だよりの原稿は限られた文字数の中で要点を正確に伝えなければなりません。
　このような書き分けは、細かい調整が必要な分だけ時間がかかり、文章を書く作業そのものよりも、その後の調整に多くの労力がかかることもよくあります。文章は相手によって求められる雰囲気や表現が変わるため、一つひとつの媒体に合わせて文章を整える作業は、広報の大きな負担になりがちです。
　ChatGPTは、この複数パターンの作成を短時間で行うことができます。一つの原稿を入力し、どのような相手向けに書き換えたいかを伝えるだけで、その内容に合わせた文章をすぐに作成してくれます。例えば、高齢者にも読みやすい言葉に直すことや、SNS向けに短く整えること、議会だより用に決められた字数に合わせて要点を凝縮することが可能です。
　また、来賓挨拶のスピーチ用に、口頭で伝えやすい文章にすることもできます。書き言葉と話し言葉では伝わり方が異なるため、この調整を短時間で行えるのは大きな利点です。さらに、子育て世代や働く世代といった特定の層に配慮した表現に書き換えるなど、よりきめ細かな調整も可能です。
　用途に応じた文章の書き分けが容易になることで、広報活動の質を維持しながら作業負担だけを減らすことができます。今までなら文章の作成と調整に多くの時間を割かれていた部分が、AIの手助けにより軽減され、議員としての本来の業務により多くの時間を充てられるようになります。忙しい議会日程の中でも、安定した広報を続けられるようになる点は、地方議員にとって大きな力となるでしょう。