2025.10.10 医療・福祉
第9回 たかが、ごみの分別、されど地域共生に大きく関わるごみの分別
介護保険でできること
ちなみに、介護認定をもってホームヘルパー(訪問介護)を利用した場合でも、この問題に対応するのは、それほど簡単なことではありません。
というのも、ホームヘルパーは一般的に、週に何回かスポットでしか来ませんので、老人本人が間違ったごみの分別をしてしまうことを止めることはできません。
となると、自宅に訪問した際に、混在したごみをホームヘルパーが分別し直すことになるでしょう。そして、そのごみを決められた曜日・時間帯に捨てられれば問題はありません。
しかし、全国的にホームヘルパーは不足傾向にあり、ごみを廃棄するタイミングが、決まった曜日の早朝となっている場合、そのルールどおりに捨てることも難しいことがよくあります。
結果的に、本来の曜日とは異なる日にごみを捨ててしまったり、時間帯を間違えて猫やカラスに荒らされ、地域住民からにらまれてしまったり。
中には集合住宅などで、いつでもごみを廃棄できる共同スペースが設けられていたり、自治体によっては、ごみの個別収集を行い、〈ホームヘルパーによる仕分け〉も組み合わせて利用することで対処している場合もあります。
しかし、どれも万全な対応策とは言い難く、軽度認知症が始まった老人が、長らく住んだ家や土地から排除される一因となっています。
健常な人には、「たかがごみの分別、ごみの廃棄問題」なのですが、一部の障害者や老人には、地域共生に大きく関わる問題なのです。
認知症基本法や条例に基づく具体策の推進を
令和6年に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では、基本理念(3条)に以下の文言があります。
「認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去することにより、全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全にかつ安心して自立した日常生活を営むことができるようにするとともに、自己に直接関係する事項に関して意見を表明する機会及び社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその個性と能力を十分に発揮することができるようにすること。」(下線筆者)
上記の法律を念頭に、条例を定めている自治体も少なくありません。その法や条例の理念を具現化しうるよう、誰もがごみを出しやすく、住みやすい社会をつくること──それが地域共生社会への一歩だと考えます。
■参考文献
◇環境省(2021)「高齢者のごみ出し支援制度導入の手引き〈第2版〉」(https://www.env.go.jp/content/000308963.pdf)
◇田畑智博・小田実紀・宮本一毅ほか(2016)「超高齢社会に対応した廃棄物処理システムのあり方に関する考察」日本LCA学会誌12巻4号(https://www.jstage.jst.go.jp/article/lca/12/4/12_243/_pdf/-char/ja)
◇宮前典子(2010)「静岡県沼津市におけるプラスチックごみ警告数と高齢化率の関係について」静岡県立大学短期大学部研究紀要24号(https://oshika.u-shizuoka-ken.ac.jp/media/20110414132256626172129.pdf)
