2025.10.10 予算・決算
第1回 予算が余るのは悪いこと?
問うべきは金額ではなく成果
民間企業であればより経費を安く上げようと考えるのが当たり前だが公務員はそう考えないのかという意見もあるでしょう。しかしながら、民間企業の場合は、より大きな利益を追求することが究極の目的であり、そのためのコストダウンは企業として当然第一に考える基本的な認識になりますが、自治体の場合、企業会計や特別会計などの特別な事業構造のものを除き、ほとんどの事業は市民から集めた税金という原資で、よりよい市民サービスを提供することが究極の目的であり、「より安く」よりも「より高い満足」を追求することが基本になっています。
そのため、先ほど紹介したように、「たくさんの予算」=「たくさんの市民満足」だったという時代背景もあって、「より安く」という意識が民間企業に比べれば少し薄かったのではないかと私は思います。
しかし、時代は変わり、予算の額で市民の満足を買える時代は終わりました。また、市民の満足をお金で買えたとしても、自治体の財政は年々厳しさを増しており、市民の満足のために投じる資金が潤沢にあるわけではありません。
そこでまず「より高い満足」を目指した上で、それを「より低い金額」で実現する「費用対効果」という概念が芽生えてくるわけです。支出予算の執行節減、歳入の確保などにより予算を余らせるための職員の創意工夫を否定するものではありませんが、あくまでも同じサービスを提供するのであれば、工夫してより安く実現する努力が必要ということであり、よりよい市民サービスを提供することが究極の目的であるならば、そもそも同じ金額でも「より高い満足」を目指すことが必要です。
そのためには、自治体組織はどのように取り組めばよいのでしょうか。そのために必要な自治体組織の努力を促すために、市民は、議会はどのように自治体組織と関わっていくべきなのでしょうか。
予算はあくまでも個々の施策事業に投じる費用の明細にすぎません。大事なのは金額ではなく、その金額で何をして、どのような効果を上げるか。予算が余ったか使い切ったかで財政課や議会から怒られることを恐れるのではなく、限られた財源でより高い満足を実現できる事業内容の予算を組み、それを効果的、効率的に実行することで市民から喜ばれるよう、工夫したいものです。
毎年議会で行われている予算、決算の審査では「いくら使ったのか」、「いくら余ったのか」なんてくだらない質問ではなく、それがどう役に立ったのか、についてきちんと質疑が行われ、そのことが市民の前に明らかにされる、そんな議会であってほしいと思います。
※屋号「Office aNueNue」について
昨年末に市役所を辞めてフリーランスとなり、全国の自治体経営や官民連携の支援に専念することにしましたが、その際に「屋号」をどうするか考えました。
大好きなHAWAIIにちなんだものがいいなと思い、たどり着いたのがanuenue(アヌエヌエ)。HAWAIIの言葉で「虹」という意味です。
Ole ua, Ole anuenue(雨が降ったら虹が出る)という言葉はHAWAIIの人たちの心の支えとなる言葉。
「つらいことの後には必ずいいことがある」という前向きなメッセージが込められています。
この言葉を座右の銘として目の前にあるつらいことに前向きに立ち向かい、乗り越えていこうという気持ちを込めて、anuenue(虹)を屋号とすることにしました。
また、役所を辞めて役所の外に出ることで、役所の中と外をつなぐ「架け橋」になれたらという気持ちも込めており、この連載でも、元自治体職員の立場から自治体職員と議員、市民をつなぐ「虹の架け橋」になれたらと思っています。
