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2025.10.10 予算・決算

第1回 予算が余るのは悪いこと?

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Office aNueNue代表(元・福岡市財政調整課長) 今村 寛
 

はじめに

 皆さん、初めまして。本日より議員NAVIで寄稿連載させていただくことになりました、元福岡市職員の今村寛と申します。
 昨年末まで福岡市役所に33年9か月勤め、様々な部署を経験してきた私ですが、主に財政畑で培った知見をもとに「財政が厳しいとはどういうことか」、「どうすれば財政健全化を実現することができるのか」といった情報発信を全国各地での講座、講演、SNS等で行っています。
 今回の連載では、専門とする財政の分野に限らず、自治体職員として今まで体験してきた地方議会議員の皆さんとの関係性にまつわる話題を軸に、「議員と職員の良好な関係を築くために必要なこと」について、話題提供していきたいと思います。

予算が余ると財政課に怒られる?

 自治体の職員は「予算が余る」ことを嫌います。理由は二つありますが、まず一つ目は「財政課に怒られるから」(笑)。これ、まことしやかに信じられていますが、大きな誤解です。本当に怒っている財政課の職員がいたら、私に連絡してください(笑)。
 では、予算が余ると財政課が怒る(と思われている)のはなぜでしょうか。
 財政課が毎年度の予算を組むためにどれほどの努力をしているのかを想像してみてください。自治体の予算は年度ごとに定めることになっていて、その年度に見込むことができる収入の範囲でしか支出を計画することができません。また、国と違って自治体は、必要な支出を工面するための収入が不足する場合に、その赤字を埋める借金をすることができません。
 非常に限られた制約条件のもとで収入と支出のバランスをとることになっているのですが、予算編成の過程で各現場から上がってくるのは「あれもやりたい」、「これも必要」という支出見積りばかり。これを収入として確実に見込める金額の範囲に収めるために「あれはいらない」、「これはこの金額で」という切り込みを入れる、いわゆる「査定」を行い、血のにじむような努力を経て予算を組んでいるのが実情です。
 そのため、なけなしの金をはたいて必要最小限の金額を計上したのに「余りました」といわれると、せっかくお前たちが必要だというから用立ててやった貴重なお金を余らせるとは何事か、けしからん! という話になるわけです。
 しかし、実際に予算が余ったらどういう会計処理が行われるのかを理解すれば、予算が余ることを財政課が怒るというのは筋違いであることが分かります。「予算が余る」というのは、支出が予算で定めた支出予定額を下回ることですが、自治体の予算は通常、収入と支出が同額になるようにしていますので、支出が下回った分、収入が余ります。また、支出はもともと収入を上回ることができないので、自治体の決算は必ず支出が収入を下回り、黒字になるようになっています。
 この収入と支出の差額である黒字分は「決算剰余金」という名目で翌年度に繰り越され、翌年度の収入として翌年度の追加的な支出の財源に充てたり、基金として将来に向けて積み立てたりすることができます。余ったお金がたくさんあれば、それだけ次年度以降の予算編成で使えるお金が増えることになるので、自治体として損をしているわけではないし、財政課にとってはフリーハンドで使えるお金が増えるので「決算剰余金大歓迎!」なはずなのですが、この構造、実はほとんどの自治体職員が理解していません。

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