2025.06.25 仕事術
第31回 どうする議長①
各常任委員会及び特別委員会の進捗管理を見える化
各常任委員会所管事務等活動報告一覧表の横軸には議会運営委員会を筆頭に、各常任委員会及び広聴広報委員会が記載されています。
縦軸にはまず大項目として、テーマという項目立てがされています。このテーマについては「第18回 どうする常任委員会①」でもお伝えしたように、各委員会は、ただ漫然と執行部から与えられる議決事項や請願を審査するのではなく、より積極的に市政の課題に取り組むことを、2009年3月に制定された所沢市議会基本条例18条(3)で規定していました。
上記が議論されていた時期にはまだ表が整っていませんでしたが、このときに表があったとすれば、テーマには「療育支援について」と記入されます。
次項目の大項目が「所管事務調査」で、中項目として「所管事務調査事項」、「会議」、「議員派遣・視察等」としています。「所管事務調査事項」には、テーマも含めて、テーマ以外の所管事務調査も記入します。例えば、健康福祉常任委員会であれば、「療育支援について」及び健康分野の調査事項、最近であれば、「帯状疱疹ワクチンについて」などです。「会議」には、今後の委員会開催日程やこれまでの会議開催実績が書き込まれます。1年後にこの会議の項目を見れば、当該委員会の活動量が評価できます。「議員派遣・視察等」には視察の予定や実績が記入されます。この表で、テーマや所管事務調査事項と視察先が一覧化できるので、テーマと対応していない思いつきの視察については基本的に避けることができます。
続いて、大項目として、テーマとして政策提言するために選択する項目が続きます。「委員会提出議案」には、最終的に何らかの条例改正や新規条例提案を目指す場合、この項目に、例えば「療育支援条例(仮称)」と記入します。様々な調査を経て最終的には提出に至らなくてもよいのですが、あくまでも議会本来の役割からすれば新規条例提案や既存条例改正は目指したいところです。
「参考人招致」には、テーマや所管事務事項に関する参考人招致の計画や実績を記入します。参考人を委員会に招致するのは、請願者の参考人招致の場合と、テーマに関連する参考人招致が考えられます。いずれにせよ参考人招致は、「第20回 どうする常任委員会③」で紹介したように手続が相当煩雑です。あらかじめ計画しておかないといけません。招致予定を決めておいてそこから逆算し、いつまでに何をしなくてはならないかを明らかにするのも、この項目の目的です。
「政策研究審議会への諮問」については、その制度の来歴も含めて次回、詳細に説明します。
「専門的知見の活用(地方自治法100条の2)」については、特に委員会のテーマについて、地方自治法100条の2にのっとり、専門家に依頼して、その意見を徴するものです(4)。
所沢市議会では、これまで6回、4人の専門家に調査をお願いしています。この項目も手続が煩雑であること、予算を準備しなくてはならないこと、専門家の選定など実施には手間がかかることから、その有用性は一定程度理解されていますが、それほど頻繁には実施されていません。また、専門的知見の活用の手続の煩雑さを避けるために、議員勉強会の形式で専門家から話を聞くという方法もあります。ただ、その場合、正式に議会の議事録への掲載ができないなどの課題があります。
「自由討論」も、委員会において正式な議事録を残すために重要です。それぞれの議員が意見を述べることによって、議会におけるテーマについての議論が公開されます。
「政策討論会」は、テーマと関連して、年間に設定したテーマの調査結果の出口として用いられる方法の一つです。政策討論会はこれまで14回開催されており、委員会がテーマに合わせて主催する場合と、委員会横断的に開催する場合があります。所沢市ホームページを見ると分かるとおり、14回中5回は委員会が開催しています(5)。
この表の良いところは、活発な委員会はどんどん欄が埋まっていきますが、それほど活発でない場合は白地が目立ちます。もちろん大事なのは委員会活動の中身ですが、やはり委員会として実際に政策提案を進めていく上で、それぞれの項目は、出口として重要です。
こうして、正副委員長連絡協議会で、それぞれの委員会の委員長から進捗状況を毎定例会ごとに発表してもらうことで、委員会活動の見える化が実現しました。それまでは委員会活動の全体像はなかなか把握できませんでしたから、もし常任委員会活動の活発化をお考えであれば、参考にしてください。特に条例や規則を制定しなくても、表の作成そのものは可能な取組みですから、できるところから、あるいは、全体が俯瞰(ふかん)できなくても、ご自身が委員会の委員長になられた場合、その委員会内部限りでも実施されてはいかがでしょうか。
(1) 地方自治法104条「普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する。」
(2) 清水克士「議長は『任命権者』ではなかったのか?」月刊ガバナンス2023年10月号(https://shop.gyosei.jp/online/archives/cat01/0000076676?srsltid=AfmBOoqeMn-BswxSabfAzPo4dKAOmm0SpkKbFaw4rIcAliJmjAjxXO0f)。
(3) 所沢市議会基本条例18条「委員会の委員長及び副委員長は、市民の要請に応えるため、所管委員会に係る市政の課題に対し、常に問題意識を持って委員会を運営するとともに、政策立案及び政策提言を積極的に行うよう努めなければならない。」
(4) 所沢市ホームページ「専門的知見の活用」(https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shigikai/gikaikaikaku/senmontekichiken/index.html)。
(5) 所沢市ホームページ「政策討論会」(https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shigikai/minasanto/seisakutouronkai/index.html)。