2025.06.25 政務活動費
第13回 携帯電話に係る経費の支出
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
携帯電話は政務活動における議員の調査研究その他の活動に資されるために使用することは明らかであり、名古屋高判令和4年7月27日においても、携帯電話は政務活動に関する連絡手段や情報収集手段として、議員の政務活動の用に供され得るものであり、これらに係る経費は、いずれも政務活動と一般的な関連性を有するものと認められるとされ、当該経費を政務活動費から支出することについては問題とならないと解される。
しかし、その経費の全額を支出することができるかというと、全額を支出することは極めて難しい。それは、携帯電話の使用は、政務活動のためだけに限定して使用し、私的な利用をしなかったことを立証することが困難であるからである。
【名古屋高判令和4年7月27日】
携帯電話及びタブレット端末は政務活動に関する連絡手段や情報収集手段として、……いずれも議員の政務活動の用に供され得るものであり、これらに係る上記経費は、いずれも政務活動と一般的な関連性を有するものと認められる。そしてこれらの経費は個々の政務活動ごとに生じるものではなく、通常、一定期間の利用に対する対価又は経費という形で生ずるものであって、個々の政務活動との直接的な対応関係を明らかにすることは事実上困難であるし、仮に、これらの利用時間や利用割合等に応じた対応関係を想定できるとしても、これを逐一明らかにすることは、時宜に応じた的確な政務活動の実施に支障を来し、地方自治法及び本件条例が政務活動費の交付を定めた趣旨に反することにもなりかねない。これらの点を考慮すると、上記経費は、本件条例別表所定の「共通経費」として位置付けることがふさわしい経費であるといえる。
また、議員の活動は、政務活動のほかにも、政党活動や後援会活動など多岐にわたるものであり、これらの活動のために上記携帯電話、タブレット端末……を使用することも想定されるところ、本件手引きは、議員がこれらの携帯電話等を使用する事務のうち、一般的に政務活動に関連性を有するものの割合及びそれに要する金額として上記の割合及び充当限度額を定めたものであり、上記の本件手引きの定めは、地方自治法及び本件条例の趣旨に照らして不合理なものであるとまでは認められない。