2025.06.10 New! コンプライアンス
第13回 女性議員による本会議でのセクハラ被害告白
(2)本会議後の対応
本会議での告発を受け、B市議会議員のうち4人が事実確認を求める申入書を議長宛てに提出。また、女性議員らで構成される団体も調査を求めて申入書を提出しました。これらを受けて議長は、事実確認のために双方に聞取りを実施しました。
しかし、ハラスメントをしたとされる議員は、当時酩酊状態だったことから「やったかどうか分からない」、「当時の記憶がない。覚えていればとっくにおわびしている。お酒は飲んでいたと思うが、C議員が主張するようなことはあり得ないと思う」と発言しており、行為を否定しています。
また、C議員は4月28日に、A県警に被害届を提出したものの受理されませんでした。A県警は受理しなかった理由について、「A県迷惑行為防止条例に抵触する可能性があるものの、公訴時効(5年)が成立している」という点と「暴行、脅迫の行為がないため、強制わいせつ罪には問えない」とコメントしています。
(3)本事案の原因
本事案については、警察への被害届が受理されなかったため、議会内での調査による事実確認が行われています。事実については今後の調査結果を待つ必要がありますが、今回は、被害者が声を上げられなかった原因と対策について解説していきます。
今回の告白に至った原因は、ハラスメント行為をしたとされる議員にあることは間違いありません。一方で、議会事務局への「相談」が本事案のポイントになると考えています。
議会事務局の基本的な分掌事務は、議会及び委員会の運営や人事経理、決済や広報にあります。今回の告白では、議会事務局が視察研修の報告書を削除したとの訴えがあり、これが仮に事実であれば、議会事務局の職務分掌を逸脱した行為として問題視されます。また、「C議員のお名前にも傷がつくこととなりますので何とぞ」と、暗に公表を控えるように要請するのも問題です。
一方で、議会事務局はあくまで議会運営のための事務を行う組織であるため、議員間のトラブルの仲裁や事実確認を行うことは職務分掌に入っていません。
議員はあくまで一人ひとりが独立している存在です。議会事務局は、議会として決定した事項であれば対応できますが、議員個別の事案に対応することはできないため、C議員からの議員同士のトラブルに関する「相談」も職務分掌外といえます。
特に今回の事案は、いずれも「食事」という公務外で発生したことから、議会事務局が何らかの権限を持つことはないため、相談するのであれば、まず議長や議会運営委員長に相談する方がよかった可能性があります。
とはいえ、これはC議員の対応を問題視するものではありません。当選1期目で右も左も分からない状況で頼れるのは議会事務局だけであるのも事実です。本件の原因は、ハラスメント被害を相談できる体制がないことが最大の原因といえます。今回の事案のように、ハラスメントを相談する相手がいなければ、自らの責任と覚悟の下で告白するしか手段がないと考えても無理はありません。C議員が本会議で自らの経験を告白しなければ、ほかにハラスメント被害を訴える手段がない、その議会の構造こそが最大の原因といえるでしょう。