2025.06.10 New! コンプライアンス
第13回 女性議員による本会議でのセクハラ被害告白
セクハラ被害を訴える賛成討論の内容
本事案は、C議員がB市の「ハラスメント防止条例」の採決に当たり、賛成討論の場において自らのハラスメント被害を訴えました。その内容は以下のとおりです。
(1)賛成討論における発言内容
今、私は2期目で、3年目の議員生活を迎えようとしています。私が1期目に議員になったときは右も左も分からないことばかりで、議会のしきたりなどに大変戸惑いました。
視察などで先輩議員とともに出かけた際、食事のときは常に目を配り、先輩議員の飲物が空になる前に注文しておかなければ「使えないやつ」などといわれました。注文していてもなかなか飲物が来ないと「たるんどる」、「なめとる」などといわれ、「注文はしていますが、まだ来ません」といえば「女のくせに言い訳をするな」などといわれました。
女のくせに。「男女共同参画」、「女性議員がなぜ少ないか」などを学んだ日の夜の一幕です。
私は、議会に提出する報告書の感想部分に「パワーバランスによる圧力。一般社会とは違う、男尊女卑の考えを持つ議会」について、私が体験した内容の一部を記しましたが、この内容は事務局の判断により削除の依頼をされました。
削除の理由は「事実であっても選挙に勝ち続けてきた方ですから、公表すればC議員のお立場が」とのことでした。私は、自ら見えない力に屈しました。
政治分野においてもハラスメントは深刻です。少し以前の報告では、内閣府男女共同参画局の女性の政治参画への障壁などに関する調査研究報告によると、ハラスメントを受けたことがある地方議員は全体で42.3%。女性に限ると57.6%にも上りました。言葉の暴力などもつらいですが、女性という性別に対する卑劣な行為は到底許せるものではありません。
常任委員会から出かけた視察先での夕食時、ドリンクのオーダーをとっていたところ、突然座っていた男性議員が立ち膝をして、「チューッ」っといいながら私の左頬にキスをしてきました。当然、他の議員も見ている一瞬の出来事でした。
「何をするんですか」と怒ると、「君の赤いほっぺを見ていたら、リンゴを思い出してね。キスをしたくなっちゃった」と。倫理から遠くかけ離れた発言に恐怖を覚えました。
ほかにも酔って歩けなくなった男性議員を先輩の女性議員とともに支え、歩いていると手に温かい感触がありました。「ペロンペロン」といいながら男性議員は私の手をなめていたのです。とっさに全力ではたきました。
先輩の女性議員も同じことをされていましたが平気な様子で、「お酒を飲んでのことだし、そのうち慣れるからそう怒りなさんな」といわれました。「そのうち慣れる」その言葉に本当に驚きましたが、それは後に常習犯ということを意味していました。
そんなことに慣れていいはずがありません。まずは事務局に相談をしましたが、「そのようなことがあったことを公表すれば、C議員のお名前にも傷がつくこととなりますので何とぞ」と説き伏せられました。
「女だから」と悔しい思いをした上、自分の名前にも傷がつく。まだまだほかにも男性議員による余罪があることを知った議員から、私は事情を聞かれ全てを話すと「政倫(政治倫理審査会)だな」といわれましたが、私自身、自分の名前に傷がつくことを恐れ、事を大きくはしませんでした。
あのとき、「見えない圧力に屈しない気持ちがあったなら」、「声を上げる勇気があったなら」と今は思い、一石を投じようと覚悟を持って、このタイミングで私の身に起きた事件をお話しさせていただきました。
パワハラ・セクハラ・マタハラ・アルハラなどのハラスメントは相手を不快にさせたり、不利益を与えたりするなど肉体的・精神的な苦痛を与え、人間としての尊厳を侵害する多岐にわたる行為の総称でもあります。
加害者は自覚を持たず、無知・無自覚又は当人なりの善意に基づいて行為に及んでいる場合もあるとされています。
今回の条例では、ハラスメント相談員のほかに、内容によって職員の苦情を受け付ける「公平委員会」に相談ができることが明示されています。
相談を受けた公平委員会は、外部有識者でつくる審査会を設置し審査をされるとのことは、市役所で働く男性、女性、全ての職員さんにとって安心なことと思います。
今現在も、誰にもいえず一人苦しんでいる職員さんもいらっしゃるかもしれません。近隣の自治体でも、ハラスメントの事案により市役所業務が停滞するなどということもありました。条例の制定により被害の抑止、ひいては市民サービスの向上にもつながると思い、賛成とさせていただきます。