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2025.05.26

第25回 アスベスト(石綿)の被害に遭ったらどうすればよいか

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弁護士 尾畠弘典

Qアスベスト(石綿)の被害に遭ったらどうすればよいか。

A

アスベスト(石綿)は、耐熱性や耐摩耗性に優れた天然の繊維状鉱物であり、かつては建材や電気製品など多岐にわたる用途で使用されていた。しかし、その繊維を吸入することで、中皮腫や肺がんなどの重篤な健康被害を引き起こすことが明らかとなり、平成18年(2006年)以降、すべての種類のアスベストについて製造・使用・輸入が禁止となった。
 これらの健康被害に対する救済措置として、平成18年(2006年)に「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下「石綿救済法」という)が施行され、労災補償の対象とならない被害者やその遺族に対して、医療費や療養手当、弔慰金などが支給される制度が設けられた。
 さらに、令和4年(2022年)6月の法改正により、特別遺族給付金の請求期限が10年間延長され、支給対象も拡大された。これにより、より多くの被害者や遺族が救済を受けられるようになっている。

1 アスベスト(石綿)とは
 アスベスト(石綿)は、天然に産出される繊維状の鉱物で、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているため、建築材や断熱材、電気製品などに広く使用されてきた。
 しかし、その微細な繊維が空気中に飛散しやすく、吸入することで肺に蓄積し、中皮腫や肺がん、石綿肺などの疾患を引き起こすことが判明した。これらの疾患は、アスベスト暴露から発症までに数十年の潜伏期間があるため、被害の把握と救済が困難とされてきた。

2 アスベストによる健康被害
 アスベスト暴露による主な健康被害には、以下のような疾患がある。

  • 中皮腫:胸膜や腹膜などの中皮に発生する悪性腫瘍で、アスベスト暴露との関連性が非常に高いとされる。潜伏期間は30~40年と長く、進行が早いため、早期発見が困難である。
  • 肺がん:アスベスト暴露により発症リスクが高まるとされ、潜伏期間は30~40年とされる。
  • 石綿肺:アスベスト繊維の吸入により肺組織が線維化し、呼吸機能が低下する疾患である。進行すると呼吸困難などの症状が現れる。
  • びまん性胸膜肥厚:胸膜が広範囲にわたり肥厚し、呼吸機能に障害をもたらす疾患である。


3 アスベスト被害救済制度の背景
 アスベストを扱う工場や作業など、職業上アスベストにさらされる労働者にアスベストによる健康被害が生じた場合は、それが業務上の事由によるものと認められると、労災保険から補償を受けることができる。
 しかし、工場従業員の家族や工場周辺の住民などにアスベストによる健康被害が生じても、労災補償の対象にならず、医療費などを受けることができなかった。
 そこで、労災補償の対象とならないアスベストによる健康被害者も、医療費や療養手当などの救済給付を受けられる救済制度を創設する趣旨で石綿救済法及びこれに基づく被害救済制度が制定された。
 

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