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2025.04.25 New! 仕事術

第30回 どうする緊急質問

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緊急質問を通じて、政策変更が促された事例

  では実際に、筆者が緊急質問に関わった事例について順を追って確認していきます。
  まず、2010年3月定例会について振り返ります。3月定例会では、市長の施政方針演説が行われますが、その施政方針演説冒頭で、市内の地域経済を担う公益法人である、ある団体に対する補助金予算についての議案の取下げと、そのことについての陳謝が市長からなされました。その問題については、開会前にも全員協議会が開催されました。執行部としては、全員協議会の開催で何とか事が収まるであろうとの判断だったようです。しかし、先ほども少し説明したとおり、全員協議会でのやりとりは議事録に残らず、その場での執行部の発言は、その後の対応策に対する拘束力もありません。その場しのぎの答弁で逃げ切られる可能性もありました。また、この事案は市内の地域経済を担う公益法人である団体が関わる案件でしたので、その方たちに対して議会内の議論を公開するという必要性もありました。議会での議事録が残る答弁であれば、一定の拘束力が発生します。全員協議会でもさらに問題点が明らかになってきたことから、筆者があえて緊急質問を提起しました。手順としては、筆者から議長に申し入れ、議会運営委員会において緊急質問の日程追加を検討し、議会運営委員会で意見の一致を見たために、議事日程の追加が認められました。
  議会運営委員会で日程追加について意見の一致を得るハードルは高いのですが、当時は、前年に議会基本条例が制定されて、なるべく前向きに検討しようという気風があったこと、そして、これが最大の理由なのですが、当時の市長が、4期続けた保守系バリバリの市長の後の、国政では野党系の政党に属する市長であったことも要因でした。
  結局、このときは私も含めて9人の議員が、市長による施政方針演説が行われた定例会初日に、緊急質問を行いました。緊急質問を提起しながら、質疑者が1人しかいなければ、本当に切迫した緊急性があったのかという疑念を持たれかねません。その点では、9人の質問があったことで、緊急質問を提起した筆者も正直安心しました。
  緊急質問を実施し、最初は議会が何か騒いでいる程度の感覚であった、地域経済を担う公益法人団体関係者も、ようやく事の重大性に気づいたのか、補助金の減額修正を施した補正予算案が提出され可決しました。結果的に、緊急質問を実施したことにより、執行部による補助金の減額という政策変更がなされることとなりました。
  2012年6月議会では、市も出資し、担当部長が役員を兼任している会社が、特定の政党に対して政治献金をしていた事実が新聞報道を通じて発覚した件について緊急質問が行われました。このときは、筆者は副議長であったために、残念ながら質問ができませんでした。なお、この緊急質問を通じて、何らかの政策変更がなされたわけではありませんでした。
  2018年の緊急質問は、高齢受給者証データを格納したUSBメモリの紛失に関してのものでした。2012年及び2018年のケースともに、大きくメディアで報道されたことが緊急質問のきっかけであったともいえるでしょう。大きな報道がなされながら、議会が何らかのアクションを起こさないと、議会は何をやっているのだという批判も一部からなされます。そういった観点からの緊急質問であったと筆者は理解しています。
  2013年にも、緊急質問を求める動議が出されましたが、このときは意見の一致が見られず、緊急質問は行われませんでした。

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