2025.04.25 New! 医療・福祉
第7回 老人ホーム施策に老人当事者の声は反映されているか(後編)
老人の声なき声は拾われているか
ここまで有料ホームや介護施設の良しあしを見極めることの難しさを見てきました。これに対して、「悪質な施設紹介には、苦情が上がるのではないか」と疑問を持たれるかもしれません。
そして、その疑問こそが、この問題の核心に通ずるものだと思うのですが、紹介事業者への苦情などの実態は、正確な数値としては把握されていません。
なぜなら、法整備が行われていないために、本来の事業内容そのものも規定されていないし、紹介事業者の総数そのものも把握されていないからです。
ただし、国からの指導を受け、民間団体が一定の条件をクリアした事業者を登録し、インターネット上に公表する届出制度(紹介事業者届出公表制度)もできました(https://koujuren.jp/todokede/)。
しかし、届出のための条件は、それほど厳しいものではありませんし、その届出の真偽を審査する機関もないようです。また、仮に届出に偽りがあった場合も、届出を取り消されるだけで罰則もありません。そもそも、届出をせずとも入居紹介業は行えますから、届出をしていない業者も相当数存在するのではないかと考えます。
また、苦情に関していえば、調査報告レベルのものは存在します(図3)。
しかし、この調査内容も、調査実施側でアンケート送付先住所を確認できた紹介事業者76社だけに送付したアンケートで、かつ、回答数も15社(回答率19.7%)のみと非常に少なく、データの信ぴょう性に疑問が付きます。
出典:PwCコンサルティング(合)(2021)
図3 高齢者向け住まいの相談や紹介に関わるクレームの内容(複数回答)