2025.04.25 New! 医療・福祉
第7回 老人ホーム施策に老人当事者の声は反映されているか(後編)
さらに、こうした医療や介護の質は、そのときの施設長や介護リーダー、介護職員などによって大きく左右されるため、「今」は良い施設であっても、1年後には異動や退職で職員がガラリと変わり、質が悪化することも珍しくありません。
私自身が介護施設で介護職として勤務していたため、「良い介護施設」を見極めることの困難さを痛感しているのです。
もっとも、こうした介護施設の選択の難しさは、有料ホームに限ったことではありません。例えば、全国の介護保険施設の詳細が検索できる厚生労働省の介護サービス情報公表システムなるものがあります(図1)。
出典:厚生労働省(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/13/index.php?action_kouhyou_pref_search_condition_index=true)
図1 「介護サービス情報公表システム」の一部
このウェブサイトでは、有料ホームに限らず、他の介護施設の人員体制や取得している加算(=基本的な介護以外の付加的サービス)などの詳細を見ることができます。しかし、これを見て、良い施設かそうでないかなど見極められるはずがありません。
理由は、先ほどと同様に、こうした媒体に出てくる情報は介護施設のほんの一部の情報にすぎず、施設内での毎日の生活が本当に快適か否かは、入ってみて、しばらく生活してみなければ分からないからです。
さらには、介護保険施設等でも高齢者虐待件数は増加の一途であり、その件数は、特別養護老人ホーム(32.0%)が最も多く、有料ホーム(25.8%)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)(11.9%)の順になっています(図2)。
しかし、先の介護サービス情報公表のサイトにも、虐待が発覚した施設などは掲載されていませんので、利用者・家族がそうした施設を選択肢から外したくとも、それすらできないのです。
※介護老人福祉施設、居宅サービス事業等の業務に従事する者
出典:厚生労働省(2023)
図2 養介護施設従事者等※による高齢者虐待の相談・通報件数と虐待判断件数の推移