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2025.04.10 政務活動費

第12回 政務活動に伴うタクシー代支出の是非

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 これらの判例に対し、一定の制約を課した上でタクシー代を認めるとする判例としては、仙台高判平成30年2月8日がある。
 すなわち、タクシー代も、調査研究費の一例として挙げられていることから、調査研究活動のために支出を要したタクシー代について政務調査費からの支出は許されるが、一般に、タクシー料金は、他の公共交通機関の運賃よりも割高であり、調査研究活動に伴うあらゆる移動にタクシーを利用する必要性が当然に存在するとはいえず、そのような必要性の存する場合とは、調査までの時間的余裕の有無や調査先の地理的状況に鑑み、他に適切な交通手段が存在しないなど、タクシーの利用を相当とする事情の存在する場合に限られると判示している。
 そして、タクシー以外の安価な交通手段が数多く存在しており、支出を相当とする事情の存在する場合は限定されるものと考えられることから、タクシー代の支出については、少なくともその一部について調査研究活動との合理的関連性を通常欠くものと事実上推認され、被告人である議員が、政務調査費からタクシー代を支出することを相当とする事情に関して事実上の推認を覆すに足りる適切な反証がなければ、調査研究活動以外の目的が併存するとして、少なくとも支出額の2分の1が違法な支出となると判示している。それゆえ、二つの活動が併存すると考えられるタクシー代は、2分の1を上限としてしか支出することができないこととなる。
 なお、当然であるが、調査研究活動に伴う移動に無制限にタクシーを利用することが許されているとはいえず、タクシー代の支出が政務調査費の使途基準に違反するかどうかは、議員個人の予見可能性の有無は必要ないと判示されている。

仙台高判平成30年2月8日
 本件使途基準上、調査研究費は、市政に関する調査研究活動及び調査委託等に要する経費と定められているところ、タクシー代も本件手引書上、調査研究費の一例として挙げられており(乙A1)、当該記載が必ずしも政務調査費の支出について定めた法の趣旨に合致しないとはいえないから、調査研究活動のために支出を要したタクシー代について、およそ政務調査費から支出することが許されないということはできない。
 しかし、一般に、タクシー料金は、他の公共交通機関の運賃よりも割高であるところ、調査研究活動に伴うあらゆる移動にタクシーを利用する必要性が当然に存在するとはいえず、そのような必要性の存する場合とは、調査までの時間的余裕の有無や調査先の地理的状況に鑑み他に適切な交通手段が存在しないなど、タクシーの利用を相当とする事情の存在する場合に限られると解される。
 タクシー以外の安価な交通手段が数多く存在しており、上記相当とする事情の存在する場合は限定されるものと考えられることからすると、タクシー代の支出については、少なくともその一部について調査研究活動との合理的関連性を通常欠くものと事実上推認され、被告補助参加人らは、上記相当とする事情に関する事実上の推認を覆すに足りる反証を要する。そして、被告補助参加人らからの適切な反証のない場合は、調査研究活動以外の目的が併存するがその従事割合を合理的に区分し難い場合として、少なくとも支出額の2分の1が違法となると解すべきである。
 本件についてみると、証拠(丙B1の15、8の2、証人I)及び弁論の全趣旨によれば、I議員が、平成23年9月ないし平成24年3月に調査研究活動に伴いタクシーを利用していることが認められるものの、各タクシー代の支出について、上記相当とする事情の存在が窺えるとまではいえない。I議員は、自身の体調等を考慮してタクシーを使わざるを得ないと考えた場合にタクシーを利用したとも説明するものの、そのような事情があるとしても、当然に他の交通手段を選択できないとまではいえず、タクシーを利用することが相当であるか否かは調査研究活動の時間的場所的条件に左右されるといえ、I議員の上記説明のみでは、支出額の一部が調査研究活動との合理的関連性を欠くと推認することについて適切な反証をしたとはいえない。

仙台高判平成30年2月8日
 補助参加人Dは、当審において、本件手引書にはタクシーの利用を制限する規定がないのに、タクシーの利用を「相当とする事情の存する場合」に限定するのは議員の予見可能性に反すると主張するものの、原判決が説示するとおり、一般にタクシー料金が他の公共交通機関の運賃よりも割高であること、調査研究活動に伴うあらゆる移動にタクシーを利用する必然性が当然に存在するとはいえないことからすれば、本件手引書にタクシーの利用を具体的に制限する規定がないことの一事をもって、本件使途基準上、調査研究活動に伴う移動に無制限にタクシーを利用することが許されているとはいえないし、本件使途基準に違反するかどうかにより不当利得の成否を判断するに当たって、議員個人の予見可能性の有無を問題とすることは相当とはいえない。

 以上によれば、タクシー代の支出は、一般的には収支報告書の提出に伴う領収書の提出は必須であるが、その支出に疑義が提示された場合には、当該タクシー代を支出した議員が、政務活動とタクシー利用の目的等の合理的関連性を一定程度説明し、その説明に対して反証を示さなければ支出が認められる傾向にあるといえる。とはいえ、原則として公共交通機関が使用できる状況においては、公共交通機関を使用した移動とすることを原則とするのは、いうまでもないことに留意を要する。

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